創業からの7年間「苦労しかなかった」
グノシーは、もともとは機械学習の研究室にいた同級生3人で「何か自分たちで作りたい」という話をしていたところからはじまったサービスです。機械学習の分野では、自分たちでプログラムを書いて、自分たちでデータをさわっていないとスキルが上がりません。だからプロダクトも自分たちで作らないといけないと考えていたんです。いざ作ったところで、正直なところ、それがビジネスになるかどうかも分かりませんでした。
ですがおかげさまでサービスはすぐに伸びてきて、「スマートフォン×ニュース×機械学習」という領域に可能性を感じるようになっていました。それと同時に、趣味として週末にメンテナンスをしている程度では、サービスは終わってしまうとも思いました。サービスって、常に改善していかないと死んでしまうんです。
長い目で見たとき、インターネット上に記事が増えてきて、「ニュースはパーソナライズされるのが当たり前」となる世界が来ることについては確信がありました。もしそれを僕らがやらなかったら、グーグルやヤフーがやるんじゃないか?それって悔しい、と思ったんです。そうしたことが起業につながりました。
もう1つきっかけになったのは、当時のスタートアップバブルです。周囲の大学生が続々と起業するタイミングでした。当時僕は22、23歳の頃。一度起業して、失敗したとしても、そのあとは普通に働けると思ったんです。ビジネスにできるかどうかは分からない。でも信じられる未来がある。キャリアとして考えれば、スタートアップをやるのはむしろ人生にとってプラスだろうと考えたんです。
結果として、僕たちは創業から2年4カ月で上場することができました。世間一般の定義で見れば、僕たちの起業は成功だと思います。ですが、起業家として走っていた僕自身は、めちゃくちゃ失敗をしていたんです。サービスが本当に伸びるのか、マネタイズが本当にできるのかと、不安なことも数多くありました。事業をするお金も集まって、「やるしかない」と覚悟を決めてもがき続けた7年間です。よく「急成長して、苦労はかなかったんですか?」と聞かれるのですが、「苦労しかなかったですよ!」としか言えません(笑)。
(競合サービスも同じ時期に出てきていたので)競争も意識せざるを得ませんでした。ですから、「絶対的な数字が伸びてる」ということよりも、競合やグローバルにあるサービスと比較して、細かいことや新しいことをしないといけないという危機感を持ち続けていました。もっとユーザーにとって便利なサービスにしなければいけない。でも便利なだけでも使ってもらえない。何よりまず、どうやったら知ってもらえるのか。そんなことをひたすら考えていました。