「自分の頭で考えていなかった」で直面した、4つの失敗

 僕は今まで多くの失敗をしてきました。その原因は何かいうと、「自分の頭で考えていなかった」ということ。自分の頭で考えきらずに、マーケットで言われている常識や定説と、起業家として直面する「リアル」に差があることに気付いていなかったんです。

 具体的には、(1)「フラットな組織がいい」と言われていたが、実際には崩壊してしまったこと、(2)「テレビCMはブランディングだ」と言われていたが、実際に作ってみるとCPA(Cost Per Action:1人あたりの獲得コスト)が想定の100倍になってしまったこと、(3)「アプリはプラットフォーム化すべき」といわれていたが、実際には誰も使ってくれなかったこと、(4)「受託ビジネスはよくない」と言われていたのに、今は受託で伸びている会社がいること。この4点です。

 まず、フラットな組織についてです。僕は、人の出せる能力の総数は「能力×情報へのアクセシビリティ」だと思っています。ですがここで人間のメカニズムを無視しちゃいけないんです。どういうことかというと、人間本来の機能的に「部下を一定数以上付けるとマネジメントが破綻する」ということがあります。Slackのようなツールを使うことで多少は補完できても、1人で100人のマネジメントはできないんです。

 それなのに「フラット=階層的でない組織」と一面的に考えてしまい、(中間層の)マネージャーを置かなかった。その結果、マネージャーは部下の体調管理すらできなくなってしまって、チームに不満がたまり、多くの人が辞めていくことになりました。フラットな組織の良さって、つまりは情報の平準化だったんです。

 次にテレビCMについてです。CMを作った経験はこれまでありませんでしたが、有力なマーケティングの手段だろうとは考えていました。これまでやってきたモバイル広告の運用では、(クリエイティブを複数作り)CPA、、つまり獲得単価を見ながら高速でPDCAを回すという手法をとってきました。ですが、テレビCMは素材1つ1つのコストもかかります。それで、「ドーンと作って、バーンとやる。ブランディングなので、CM中に同じフレーズを何度も言う」といった提案をいただいたんです。

 僕らが未熟だったので、何の疑問も持たずにそのとおりCMを制作した結果、CPAが想定の100倍になってしまったんです。もちろん同じ作り方でユーザーをうまく取った企業もあるんですが、僕らは数字を地道に見つめて、積み重ねていた会社です。テレビCMだってモバイルマーケティングのように何かしらの指標を作るべきだったんです。その後、クリエイティブを出し分けて、反響を測定していくことで、CMの効率を上げることができました。「得意な方法」を最初からできなかったのは、大きな反省です。