3つめのアプリのプラットフォーム化ですが、中国の「WeChat」はご存じでしょうか? 彼らはメッセンジャーアプリからスタートして、決済をはじめとした機能を増やしてアプリをプラットフォーム化していきました。彼らを見て、生活での接点を増やして、ユーザーのエンゲージメントを強くするいい事例だと思っていたんです。インターネットの歴史を調べると、Yahoo!もそうですが、プラットフォーム化、ポータル化は“王道”の戦略です。じゃあグノシーでもニュース以外の接点を持てないかとやってみたんですが、これがユーザーに使われなかったんですよ。

 戦略的には正しいという思い込みがあったんですけど、結局のところ、ニュースを読みたい人はニュースを読みたいんです。旅行の予約をしたいわけでも、マンガを読みたいわけでもありませんでした。ネットサービスでは「プラットフォーム化」とはよく言いますが、意味がない多機能化をしても仕方ないんです。大事なのはマーケットを観察することと、「何を求めているか」を考えることなんです。

「受託」が正解だったと証明したい

 4つめの受託ビジネスは、今まさにLayerXで挑戦しているところです。前述のPKSHAやPFNなどは、機械学習の領域でも、(自社サービスではなく)クライアントワークや企業との共同事業をメインにしています。この10年ほどで生まれたスタートアップの中を見ると、メルカリやSansanのような飛び抜けた事例を除いて、領域として大きく成長しているのは、実はこの領域(機械学習関連の受託事業)だけなんです。

「受託」というと誤解を生むかもしれませんが、パートナー企業からお金をいただいてサービスを作る、ということに可能性を感じています。もちろん自社だけでできる事業で協業をすると、意志決定のスピードは(パートナーに引きずられて)遅くなります。ですが、たとえば「自動運転の技術を作りたい」となった時に自動車の企業と組まないのは筋が悪いですよね。結局「何がプロダクトを作るまでの最速なのか」を考えないといけません。

 また、日本はベンチャーファンディングで研究開発をするのが難しい国なんです。もちろんその後は自社サービスをやるのですが、最初はクライアントワークをやっていたという企業は多いんです。ZOZOはECサイトの開発をやっていたし、サイバーエージェントは広告代理店業を今もやっています。GMOも、オンザエッヂ(のちのライブドア)もそうです。