上場時に、既存株主であるVCが大量の株式を放出することについても一部SNS上などで是非が分かれた。だがこれは、オーバハング(既存大株主の売り出しを想定しての売り圧力)を避けて適切な株価形成をするため、BASE側でVCに一律で約70%の株式の売り出しを要求した結果だという。

 競合の動きも活発になってきた。前述のShopifyも2017年に日本法人を立ち上げ、本格参入を進めている。175カ国・82万店舗が導入するShopifyの年間流通総額は、グローバルで10兆円(2018年末時点)。日本の導入店舗数については実数を公開していないが、2018年の1年間で舗数4倍以上、流通総額2倍以上に成長しているという。競合は海外勢だけではない。楽天をはじめとしたECモールやECサイト作成サービスも国内には存在している。

とにかくずっと、やり抜くしかない

 こういった状況に対してBASEは、まずマーケティングで店舗の裾野を広げていく。加えて、大きく成長した店舗が引き続きサービスを利用できるよう、機能追加を進める予定だ。競合であるSTORES.jpと提携し、予測をもとに売掛債権を買い取ることで、店舗の資金調達を支援する制度「NO CAPITAL」も開始した。「やりたいことはあるが、販売実績がないために融資を受けられない」という店舗に対して資金を提供することで、商圏の拡大をねらう。

「僕たちが持っているテーマってなかなか終わりはありません。金融の面でも店舗のリスクをなくさないといけないし、最近だとポップアップストアをはじめとした、リアルな世界に進出する店舗も増えました。その進出リスクもなくさないといけない。とにかくずっと、そのテーマをやり抜くのが大切だと思っています」

「僕が唯一、自分で誇れることは、『飽きずに同じ事業をやり続けられた』ということ。僕より優秀な人はたくさんいました。優秀さではかなわないかも知れませんが、『これからはこうなるべきだよね』という1つの未来をずっと信じてきた。未来を信じるなんて、1秒後からでもできることなんですが、みんなブレてしまいますよね。でもそこを信じるのが経営者なんだと思います」(鶴岡氏)

 小さな声を拾い上げるBASEの経済圏は上場を機にさらに広がるのか。鶴岡氏とその仲間の挑戦は、まさにこれから真価を問われることになる。(写真:林直幸)

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