「以前、Drone Fundの千葉功太郎さんが『日本のインフラはすごく古いから、まずは国内で老朽化のメンテナンスを頑張れれば、そのノウハウは世界で通用する』と言っていて、たいへん共感しました。水中ドローンによって、国内の水産業やインフラ業のレガシーな課題を解決していけば、海外にも展開できると考えています」(伊藤氏)

 実際にセールスしてみると、産業用水中ドローンの存在自体を知らなかったり、水中ドローン自体は知っていてもビジネスで使う発想がなかったりすることも、まだまだ多いという。

「ロボットは、完全な人の代わりにはなれませんが、人でなくてもできることをロボットに補完させることはできます。その手段を作ることが私たちの使命だと思っています」(伊藤氏)

深海愛で開発した水中ドローンが起こす「海の産業革命」生物調査に乗り出す伊藤氏 提供:FullDepth

 FullDepthという社名は、“海で一番深いところ”という意味だ。地球の約7割は海で、そのうち人類が到達したのは“テニスコートに針1本”と例えられるほどごくわずかで、なんと9割以上が未知の領域だといわれている。「海全域を当たり前に知れるようになり、人類の活動領域を広げる」ことが、FullDepthの最終目標だと伊藤氏は言う。

「昨年水深1000mまで到達しましたが、今後もさらにドローン開発を進め、海の土壌データを集めようとしています。将来的には、視覚的なデータにして、“海のグーグルマップ”を作りたい」(伊藤氏)

 海のように深い伊藤氏の水中ドローン愛で市場がさらに拡大し、深海が未知の領域ではなくなる日も近いかもしれない。