こうした利用を見据えて、12月5日の実証実験は高齢者が多く暮らす神奈川県藤沢市の市営住宅で実施。Amoeba GO-1はマンションの階段昇降やゴミ出しをこなしてみせた。実験の主な目的は、積載量や走行速度などのチューニングが実践的な利用に適しているかを確かめることだ。来年にはさらに実験を重ね、2021年の実用化を目指している。

粘菌アメーバの特性、ロボットに応用して起業

 Amoeba Energyは、慶應義塾大学環境情報学部(SFC)准教授の青野真士氏が立ち上げたスタートアップだ。実は、彼が大学で研究しているのは、ロボットではない。生物である粘菌アメーバの情報処理を参考にした、新たな演算処理技術だ。しかし、研究を進めるうちに粘菌アメーバの持つ特性は、ロボット開発にも役立つと感じたのだという。

「現在のロボットは、プログラムされた情報をプロセッサで演算し、それをもとに各部位に命令を伝達し、行動します。プロセッサは人間の脳に例えられることも多いですが、プログラムされていない内容や、そもそも情報を与えることができない状況には対応できません。そこでプロセッサ(脳)を経由せずに、外部環境から情報を得た部位が即座に状況に対応できるコンピュータをつくれないかと考えたんです」(青野氏)

藤沢市長の鈴木恒夫氏(左)と、Amoeba Energy代表取締役社長の青野真士氏(右)。実証実験の会場にて 提供:Amoeba Energy藤沢市長の鈴木恒夫氏(左)と、Amoeba Energy代表取締役社長の青野真士氏(右)。実証実験の会場にて 提供:Amoeba Energy

 そこで参考にしたのが、粘菌アメーバだ。脳を持たないアメーバは、体の表面で受け取った環境の変化に応じて体の形を柔軟に変化させる。これは言ってみれば、環境から受け取った情報への対応を、脳ではなく体表面で考えているようなものだ。

 この環境適応技術をもとに、従来のロボットとは全く異なる前提のロボットをつくるために青野氏はアメーバエナジーを設立した。試しにクローラ(キャタピラ)にアメーバのように柔らかなゴムスポンジを搭載したロボットを製作したところ、従来は高度な演算や制御が必要だった階段の昇降をあっさり実現したのだという。

柔らかく、生き物の特性を取り入れた「ソフトロボット」

 Amoeba GO-1のサイズは、全⻑77cm、幅62cm、高さ61cm。本体重量24kg。走行速度は約1km/hのため、動きはかなりゆっくりしている印象だ。

 実は、アメーバエナジーのように生物の特性を取り入れたロボット開発には、近年注目が集まっている。柔らかな部位を有する「ソフトロボット」の研究は2010年ごろから活発になり、日本では2018年度から文部科学省の科学研究費補助金新学術領域研究の一領域として「ソフトロボット学」が対象となった。ソフトロボットにはAmoeba GO-1のようになんらかの生き物を参考にしたものも多い。こうした「柔らかい」ロボットへの関心が高まっているのは、ロボットの利用シーンが拡大してきているからだ。