日本全国にこれだけ空き家が存在していて、人口減少や単身世帯の増加が加速度的に進むと思われる今後は、「家を売りたくても売れない」時代になっていきます。これからますます空き家は増え続け、家を売りたいという競争相手がそこら中にいるという状況になるでしょう。

 まず、今後住む予定のない家なら、できるだけ早く売りに出すことです。少なくとも、準備だけは今すぐにでも始めたほうがいいでしょう。

 本来なら高く売れた実家が、なんとなく先送りしたために、建物が古くなったり、相続でもめてしまったりして「売るタイミング」を逃してしまう。そうなると、いざ売りに出したときには相場の半分以下、あるいは売りに出しても買い手がつかない、ときには売りに出すことすらできない、という状況に陥ってしまいます。

 逆に早めに準備を進め、やるべきことのステップをきちんと踏んできた人は、相場以上の高値で売れています。

 少子高齢化や総世帯数の減少、単身世帯の増加によって、特に地方ではこれから家の価値は下がっていく一方です。日本全国で家が余っている状況のなか、売れていくのは当然条件の良い家になります。かつては少し郊外でも庭が広くて大きな家が好まれることもありましたが、今の時代、家の価値はもっぱら「立地」がもっとも大きな要素です。

「少し郊外だけど、電車で1時間半あれば都心に出られる」「リモートワークが増えたから、これからは地方都市にも需要があるのでは」なんて考えは、正直言って甘いです。現実を直視し、早めの対策を心がけることが将来の安泰につながります。

 この状況は、トランプの「ババ抜き」で考えるとわかりやすいと思います。将来的に大きな負担になるかもしれない「ババ」は、とにかく早く手放してしまうことが必要です。

元気なうちに親の意思を確認しておく

 遺産とは本来、残された家族が幸せに暮らせるように渡す「ギフト」のようなもの。手元に現金がない人ほど、「せめてこの家だけは」と子どもたちに残そうとしてしまいがちですが、その残された家がトラブルのもとになり、子どもたちがもめてしまうのを私はこれまで何度も見てきました。

「いやいや、それは豪邸のように大きな家の話でしょ? うちみたいな小さな家では、トラブルの起こりようがない」と、多くの方はおっしゃいます。でも、小さな家だからこそ家じまいを先送りにしてしまうため、もめごとが起こりやすいのです。