ですから「家をどうするか」については、親が元気なうちに決めておきましょう。こうしたデリケートな話題について、子どもから切り出すのは勇気が必要ですが、帰省のしたときなどに思い切って話してみると、実は親の方も行く末を心配していた、ということがあります。

 まず、親御さん自身が家をどのようにしたいのかを確認します。大切な家だから残してほしいというのか、売却してもいいからそのお金を残してあげたいのか。理想的なのは夫婦が健在なうちに今後について決めておくことですが、まだそこまでは考えていないという方がほとんどでしょう。

 次のタイミングとしては、夫婦のどちらかが他界したときです。しばらくは一人でも暮らせるかもしれませんが、いずれは高齢者施設へ入居する、子ども家族と同居するなどの話が出てくるでしょう。そのタイミングで売却をすると、その後がスムーズに運びやすくなります。

 いずれにしても、こうしたことは親と子ども家族(配偶者を含む)が話し合って決めること。そして口約束ではなく、親の意思を遺言書などの文書で残しておくことが重要です。高齢者施設に入ることになったら家の売却で費用を捻出しようと思っているとしても、その意志を伝えられないほどの病気になってしまったり、認知症で判断能力を失ってしまったりすると、家の売却ができなくなるからです。

遺言書は60歳になったら用意しておく

 では、どのタイミングで遺言書をつくっておくのがいいかというと、私は60歳をすぎたら用意しておいて損はないと思っています。現在、私は66歳ですが、すでに遺言書を用意しました。

 わが家は子どもが一人なので相続でもめることはまずないと思いますが、それでも親の意思を示すために必要なものだと考えています。

 子どもが複数いるのに何もしないでおくと、相続人全員で遺産をどのように分けるか話し合って決めることになります。不動産の遺産分割協議は難しく、「オレの家族が親の面倒を見た」「兄貴は子どものころからひいきされていた」など、心に秘めていたそれぞれの思いが吹き出し、もめてしまうケースは少なくありません。

 きょうだいとしては穏便に話を進めたいのに、それぞれの配偶者が加わると話がややこしくなることもあります。相続問題をきっかけに、きょうだいが疎遠になってしまったというケースは本当に多いのです。金銭面だけでなく家族のつながりにもダメージを与えるとなると、「負の遺産」以外のなにものでもありません。

 家族それぞれが同じ時間を共に過ごした家が最終的に不幸を招くことのないよう、早いうちから時間をかけて考えていきましょう。