また、家族と絶縁したことについて、本当に正しい選択だったのか自問自答しすぎないのも大切なことです。

 多くの人は、自分の経験と感情が思い込みに過ぎないのではないかと、何度も何度も自問します。自分が経験したことは、家族を捨てるほどひどいものだったのか、疑問に思うのは至って普通で、健全なことです。

 あなたの子供時代が桁外れに異常でない限り、絶縁するほどひどい家庭ではない、と思う人もいるでしょう。そのせいで傷口をさらにえぐられます。

 悲しいことに、現代において親の離婚や再婚は珍しくなく、多くの人たちが性的虐待や不貞行為、離婚訴訟、金銭的虐待、身体的虐待、依存症などに家庭を壊され、トラウマを植えつけられています。こういったケースがあまりにありふれているせいで、精神的な虐待はもはや家族と絶縁するほどの理由にはならないと思われがちです。

 あなたの育った環境が、例えば『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』という本でタラ・ウェストーバー氏が綴ったような、誰の目にも異常な家庭環境で、恐ろしく過激な経験を強いられでもしない限り、あなたが受けた虐待は軽視され、家族との絶縁に社会の支持を得られない可能性が高いでしょう。その上、親が慈善活動やPTAに参加していて、虐待が明るみに出ていない場合、ウェストーバー氏と同じように、絶縁したとしても周囲の理解を得ることは難しいでしょう。

たどり着きたい最終目標とは

 ブレネー・ブラウン氏は、著書『Braving the Wilderness(仮邦題:居場所を探す旅と1人で立つ勇気)』(未邦訳)の中で、家族からの仕打ちや社会からの批判のせいで傷つくのは当然だと述べています。

「貧困、暴力、人権侵害などの苦しみの中にあっても、家族の一員になれないことは群を抜いて苦しいことです。その苦しみは私たちの心と魂と自尊心を粉々に砕きます。そうなるともう、そのあとに続くのは次の3つのうちのどれかです。どれも私が、仕事を含め、これまでの人生で経験したことです。

1.常に痛みを抱え、心を麻痺させたり他人のせいにしたりすることで、気を晴らそうとする。
2.痛みを否定し、それによって痛みが周囲の人間や子供に引き継がれる。
3.痛みを抱える覚悟をし、自分自身と他人に情と慈しみを持つことで、独自の方法で世の中の痛みに気づけるようになる。

 この3番目に到達することが最終的な目標です。ここまで立ち直るには時間も努力も必要でしょう。傷を癒やすことを考えると、途方もない道のりに思えるかもしれません。

 でも、安心してください、そう思うのは普通のことです。立ち直るための旅を始めたからと言って、これほど大きな人生転換を競争のように急ぐ必要はありません。

 痛みを終わらせるために、できる限り早く立ち直りたいと思うでしょう。それも自然なことです。しかし残念ながら、あなたの心の核についた傷と、それに伴う感情のフラッシュバックを克服するのに、近道は存在しません。「立ち直る」にはいつだって行動が必要なのです。

 ですから一緒に、あなたの孤独と疎外感を癒やすために、もう一歩踏み出しましょう。

シェリー・キャンベル(Sherrie Campbell, PhD)
毒家族に苦しむ人々を救う心理学者であり、家族との絶縁を手伝う専門家として全米で知られている。かつてBBM Global NetworkとTuneIn Radioで自身のラジオ番組「Dr. Sherrie Show」を主宰していた。講演者、SNSのインフルエンサーとしても知られ、メディアにも頻繁に取り上げられている。著書に『幸せになるには親を捨てるしかなかった』(ダイヤモンド社)などがある。

※本稿は、シェリー・キャンベル著 髙瀨みどり訳『幸せになるには親を捨てるしかなかった』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。