早いもので、2023年も残すところ2週間を切りました。毎年恒例「今年の漢字」には「税」が選ばれましたね。受賞作品のご紹介3回目は、自分を苦しめている二つのものについて問い掛ける作品が並びました。(解説/僧侶 江田智昭)
何が私を苦しめているのか
今回も二つの受賞作品をご紹介します。まずは「仏教伝道協会賞」を受賞した大阪市平野区にある専念寺の作品「何が私を苦しめているのか。自分が握りしめている、その物差しです」から。この作品の講評は以下のとおりです。
他人ではなく、自分が大切にしている価値観が自分自身を最も苦しめるということを知らせてくれる作品。仏教の教えをとおして、いま一度自分の物差し(価値観)を見つめなおしたいものです。
自分の物差し(価値観)は自分の中で当たり前のものなので、それ自体を省みることを怠(おこた)りがちです。一般的に、私たちの生活の中での苦しみの大半は人間関係にあると言われていますから、他人の存在が苦しみの一番の原因だと、ついつい思ってしまいます。
しかし、他人ではなく、自分の物差し(価値観)を転換することによって対人関係の問題が改善することもあります。以前、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という掲示板がありました。他人を完全にコントロールすることは不可能ですが、自分自身の価値観に関してはある程度コントロールすることが可能です。
コントロールできないもの(他人)はとりあえず放っておいて、自分が心の中で握りしめている物差し(価値観)を一度見つめ直すことも大切なのではないでしょうか?