自分の「旅テーマ」を決めておこう
先ほど、「自分の関心を日ごろからストックしておく」と書きました。しかし、やみくもに「おもしろい場所は……」と考えても、なかなか出てくるものでもないと思います。心が求めている景色や土地、空間というのは、自分でもよくわからないのが普通です。だからこそ、何気なく訪れた場所で、景色に見入ったり、立ち止まって眺めたりするのでしょう。
ただ、「自分の求めるテーマ」をおぼろげにでもつかんでおくことは、大事なことだと思います。たとえば、ただ古代史の本が家の本棚に何冊かあることを知っているだけでは、まだテーマとは言えません。
しかし、ノートにスクラップを始めたら、遺跡での発見の記事とか、邪馬台国関連の切り抜きがかなり集まっている。「それならば」と、古代史の本を読み返してみると、やっぱりおもしろい。「ああ、自分は古代史に惹かれているんだなあ」と、「自覚できる嗜好」に達すれば、それはテーマになります。
それがわかると、銀行の待合室に置いてある雑誌からでも、食堂のテレビで流れている番組からでも、古代のローマやギリシャに関係する情報を見逃さないようになる。つまり、アンテナが張られるわけですね。たとえば、僕が「テーマ」にしているのは、次のようなものです。
【歴史】幕末・戦国時代・古墳時代・戦前・大正時代・遺跡
【お店】古本屋・本屋・スーパー・骨董品・リサイクルショップ・カレー屋・居酒屋
【公共施設】博物館・美術館・図書館・役所・駅・寺社・銭湯・公園
【景色】展望台・ビルの屋上
【地形】山・河原・浜辺・池・湖・海
【道】農道・山道
【動物】犬・猫・野鳥
【植物】草花・巨木
「自分が好きなものは……」と、そらで考えていてもなかなかわかりません。それより、実際に手を動かしながら行きたい場所のスクラップをしたり、好きな景色の写真を貼ったりといったことを何カ月かやる。すると「自分は断崖絶壁の景色が好きなんだな」「自分はモダン建築が好きなんだな」「やっぱり鉄道旅行はいいなあ」などと「発見」するでしょう。
ほかにも、関心のある新聞記事を切り抜いたり、本棚の本を、いる・いらないと分別していたりすると、「あ、自分はこういうことに興味があったのか」とわかってくることがあります。こういう積み重ねがないと、自分の感性や価値観というものはわからないものです。(第3回に続く)
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