ここでは、「初回相談は無料、追加相談は1回○円、定期的な相談は顧問料が〇円」というような形で集客する。
「マンション管理士としてこの2年間で稼いだのは、自治体から頼まれる調査や相談会の謝礼などで100万円もいきません。ちょっとした副業にはなっていますが、独立してまとまった収入を得るにはまだまだ工夫が必要でしょう」
本当なら、今すぐにでも独立したいというEさん。
「いつかは、マンション管理士とファイナンシャルプランナーの資格を合わせて生かしていけたらと考えていますが……」
Eさんの中で、せっかく取得した複数の資格という点と点が、まだ線としてつながっていない状態だ。Eさんに「もう一つ取得した難関資格、中小企業診断士はどうするのか?」と聞いたところ、そっちは放置したままだという。
Eさんの話を聞いていると、最も勢いがあったのは受験勉強の時で、今はその勢いが失速しているように感じる。
ちなみに、今回、10年前にマンション管理士の資格を取得したという別の50代男性にも話を聞いたが、彼は資格をまったく生かしていなかった。
「マンション管理士?ああ、取るには取ったけど、使ってない。持っていて役に立つ資格かと言われても、僕的には微妙だな」
資格試験に活路を見いだすおじさんたち
若月澪子(著)
定価1,650円
(朝日新聞出版)
Eさんはこれまでに2回転職をしている。数年前まで勤めていた2社目の企業は、若い人にどんどん席を譲る「ジョブ型雇用」のメガベンチャーだった。
「メガベンチャーだけに活気のある職場でしたが、昇進レースから外れた途端に居心地が悪くなりました。私と同じように出世の道を断たれて、不安を感じていた中高年もいっぱいいました」
Eさんはリストラに遭ったわけではないが、自らメガベンチャーを去り、今の会社に移った。
「転職して資格も取りましたが、先が見えない状況は今も同じです」
ジョブ型雇用を採用している企業では、中高年男性の大半が不安定な立ち位置に置かれる。リストラにおびえながら、第二の人生の模索を始める人は多い。彼らは次の活路を求め、資格試験を受けるのだろうか。
おじさんたちの「自分探し」は、容易に終わりそうにない。
1975年生まれ。大学卒業後、NHKのキャスター、ディレクターとして生活情報などを担当。結婚退職後に自殺予防団体の電話相談ボランティアを経験。育児のかたわらウェブライターとして借金苦や終活に関する取材・執筆を行う。生涯非正規労働者。ギグワーカーとしていろんな仕事を体験中。
※AERA dot.より転載