戦時の商社#4Photo by Yoshihisa Wada

東南アジアは電力供給の多くを、日本の総合商社が建設に関わった石炭火力発電所に依存している。この主力電源からの温暖化ガスの排出抑制を支援することが、日本のアジアにおける「脱炭素外交」の中核だ。日本が主導する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想のキーパーソンで、内閣官房参与でもある前田匡史国際協力銀行会長は、「アジアの現実に沿った脱炭素の対策とルール作りが重要」と言う。特集『戦時の商社』(全16回)の#4では、その具体的な取り組みと、どのようなプロジェクトが浮上しているかについて聞いた。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

三菱商事や住友商事、丸紅のASEANでの
火力の“脱炭素”巨額プロジェクトを一挙公開

――そもそもアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)とはどんな取り組みですか。

 日本が主導して、脱炭素に向けた対策を東南アジア10カ国と豪州の官民で構築していくものです。ASEAN(東南アジア諸国連合)全体の2050年の電力需要は21年に比べて3倍程度に増えると予想されています。現在はその6割以上が石炭火力発電です。これら全てを短期間に再生可能エネルギーに置き換えるのは現実的ではありません。

 AZECの特徴は、各国の実情に沿った解決策を提示していくこと。昨年12月18日にASEANや豪州の首脳と岸田文雄首相が共同声明を採択しました。(各国の合意を踏まえて)国ごとの事情に即した具体的な案件を進めていきます。

次ページでは、三菱商事や住友商事、丸紅といった総合商社がAZEC構想の下でどんなプロジェクトを仕込んでいるのかを明らかにする。前田会長が推進する「四つの野心的な構想」とは。