マンション、戸建、賃貸で異なる
需給バランスで受ける影響度
こうして、新築マンション価格は需給バランスの影響をほぼ受けない。顧客は売主の言い値で買うしかないのだ。
同じマンションでも、中古は新築の300棟から圧倒的に増える。築20年までとしても、単純に300棟×20年=6000棟になる。同じ駅に比較検討する競合物件が必ずある状況になる。また、供給側の売主も個人が大半となる。このため、市場メカニズムはやや機能し始める。しかし、新築マンションと同時に検討される中古マンションは新築価格に引っ張られて価格形成される側面が非常に強い。このため、需給バランスの影響はかなり限定的となる。
次に、新築分譲戸建を見てみよう。首都圏で年間6万戸弱の供給が続いているが、同じ用地に4戸だとすると、現場の数は1.5万になる。新築分譲マンションの300棟とは桁が2つ違う。常に、競合物件が近くにある状況で顧客に比較検討されている。
その上、2013年の金融緩和以降、マンション価格が用地の高騰などで1.8倍になったのに対して、新築分譲戸建の価格はコロナ禍前までほぼ横ばいだった。コロナ禍でステイホームに嫌気がさし、家探しをする人が急増し、2割ほど値上がりした経緯がある。これは需要過多の結果であるが、その価格変動幅は2割に留まった。ちなみに、中古の戸建と戸建用地の価格はこの新築分譲戸建と同様の動きをする。
最後に、賃貸住宅を検証しよう。首都圏でその数は約660万戸存在する。(住宅土地統計調査2018年)平均入居年数は4年ほどなので、年間で165万戸(660万戸÷4年)が募集住戸として市場に出てくる。
新築分譲戸建の現場数1.5万戸の100倍以上になる。これだけの数になると、近隣の競合物件はたくさんあることが常態化している中で選ぶことになる。その際、稼働率が高いと募集住戸の空室期間は短くなり、すぐ決まってしまうし、その逆でなかなか決まらないと値下げすることになる。
このため、家賃は稼働率という需給バランスに準じて決まることになる。