心境の変化で片づけも変化
一気にモノの処分が進むとき
その後1年半が経過した頃、千恵美さんから再び依頼が入りました。聞けば、平均睡眠時間3時間という大変なスケジュールを制し、専門学校を非常に優秀な成績で修了されたとのことでした。
久しぶりにお会いする彼女は肌つやが良くなり、とても若々しく見えました。そして、部屋は整った状態でキープされており、多忙な生活で、リバウンドしたかもしれない…という心配は杞憂に終わりました。
再開した片づけ作業は、前回以上にスムーズに進みました。
「もう何年も呼べていない息子家族を招いて料理を振る舞いたい」という目標を掲げてスタートした片づけ第2ステージ。千恵美さんの決断力は格段に上がり、積極的にモノを手放していきました。
前回は処分保留にしたキッチン雑貨・食器を大幅に処分。子どもたちの古いおもちゃも、以前は「勝手に捨てられない」だったのが「私の基準で判断させてもらいます」に変化し、強気の処分。クローゼットも「ここにあるのはもう着ない服なんですけどね」と言いつつ逃げていたのがうそのように、次々と衣類やバッグをゴミ袋に放り込んでいきました。
空っぽになったチェストやワゴンなど、30点近い粗大ゴミは自力で搬出。ベッド、マットレス、タンスなどの大物家具は、便利屋さんに搬出&引き取りを依頼。空いた部屋をストックスペースにした結果、リビングと和室の眺めは激変しました。
すっきりした家で、息子さん家族をおもてなしできたと、千恵美さんは大変うれしそうに話してくれました。
「自分の過去と向き合う作業は、正直とてもつらかった」
第2ステージが終わったとき、千恵美さんはそう教えてくれました。千恵美さんには「母に認められたかったけれどかなわなかった」「仕事を辞めて以降、家事・育児・介護に追われ、ずっと『何者でもない自分』を過ごしてきた」という強い劣等感があったのだそうです。家庭の外でひとりの人間として評価されて自信が芽生え、やっと古いモノと向き合えるようになったけれど、それは過去のみじめだった自分を直視させられる時間でもあった、と。
「でも、いいこともあったのよ」と、うれしそうに報告する千恵美さん。「捨てて空きができると、そこに新しい幸せがやってくるって本当ね」
千恵美さんの片づけは、現在第3ステージ。目標は、お嫁さんのご家族を招待して自慢の料理を振る舞うことだそうです。「捨てても捨ててもモノが出てくるの。片づけって終わりがないわね」と語る彼女の表情は、けれど晴れ晴れしていて明るい。
モノを手放すタイミングも、作業のスピード感も、正解が一つではないのが片づけというもの。今回のエピソードにも出てくる「逃げ道を作る片づけ」については『家じゅうの「めんどくさい」をなくす』という本で詳しく書きましたので、こちらもよかったらのぞいてみてくださいね。
(家族の片づけコンサルタント sea)