母が残したモノは捨てるのがつらい…
今決められないなら「保留」
片づけが進み、より古いモノが現れるようになると、千恵美さんの取捨選択にも時折迷いが見られるようになりました。その大半が、20年前に亡くなった母親のモノでした。
⚫︎母が残したキッチン雑貨
鍋やフライパンはいいモノでしたが、未使用で何セットもありました。そのほか、昭和レトロなパッケージのスライサーや食品保存ケースに至るまで「使ってみてから…」とおっしゃるのでした。
⚫︎母のために買い集めたブランド食器
使いこなせる量をはるかに超えたコレクションでした。しかも、聞けばほとんどが千恵美さんの趣味ではないとのこと。使いたい気持ちが薄い一方、処分する選択肢もなさそうでした。
これらの「使う見込みはないけれど、処分は今決められないモノ」はあえて「保留」という逃げ道を作りました。「向き合ったうえで、今回は捨てないと決めた」第1段階はそれで充分だからです。幸い、迷わずに処分できるモノもたくさんありましたし、そのおかげで押し入れや和室には十分なゆとりができていたので、「処分を保留」したモノも残しておくことができました。
こうして、片づけの第1ステージは、週1回6時間の作業×2カ月にて完了。毎回ゴミ袋20袋以上のモノを処分して、和室には一定の空きスペースを確保できました。
まだまだモノが残っていますよね。でも、いいんです。ご本人は満足されていました。「わけもわからず必死だったけど、気づいたらここまで来られた。私、頑張れましたね」と。「捨てるモノ」「保留するモノ」はすべて、千恵美さんが自分で選んで決めました。成果としては十分です。
本人のペースを無視して“なる早”でスッキリを目指すと、部屋の変化に本人の意識がついていけません。がらんとした空間を寂しく感じたり、大事なモノを勢いで手放してしまったと後悔するようでは、部屋はあっという間にリバウンドしてしまいます。リバウンドさせないためには、人とモノが折り合いをつけるための冷却時間が必要なのです。