つだ・だいすけ
1973年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。ジャーナリスト、メディア・アクティビスト。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『Twitter社会論』(洋泉社新書y)など多数。2011年9月より週刊メールマガジン「津田大介の『メディアの現場』」を配信中
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津田 もちろん日本人の学生もいるんですが、特に中国人留学生のなかでも、女性が多い。僕はそこで、ツイッターやネットなどの新しいジャーナリズムを教えているんです。それこそ、ツイッターの使い方から。

 それで、卒業後、留学生の彼女たちはどうするかって言うと、半分以上は中国に戻っていくんですよね。具体的にどこに就職するのかって聞くと、むこうの大手メディアに入社していくんですよ。一応言論の自由がある国で、ネットも含めた新しいジャーナリズム手法も身につけた彼女たちが就職して記者として一人前になっていく過程で5~10年後、中国のメディアは大きく変わってるんじゃないかと思うんです。

 僕の授業のアシスタントをやってくれた女子学生は、日本に留学してくる前はネットを検閲して情報の削除を行う民間企業にいたんですね。

加藤 なるほど。じゃあ、検閲を巡る政府と人民の葛藤を見ていたのですね。

津田 そう。その企業は中国政府から委託されていて、彼女はフィルタリングの前のものを見ていた。親日的なコメントとかも結構あったみたいで、それは政府にとって都合の悪い情報なんですけど、そういうものを削除する仕事をしていた。

 そうやって日本に対するさまざまなコメントを見ているうちに、なんと自分が親日になっちゃった(笑)。まあ、そういうコメントも全部見ているうちにリテラシーが身についていったという言い方もできるかもしれません。彼女は日本のアニメとかアイドルが大好きだって言ってましたよ。

 これってすごく興味深い現象ですよね。日中友好が実はネット上で中国が抑えようとしていた情報から実現したということですから。

検閲があって自由がなくても
ジャーナリストを目指す中国の若者

かとう・よしかず
1984年生まれ。英フィナンシャルタイムズ中国語版、The Nikkei Asian Reviewコラムニスト。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。2003年、高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。自身のブログは6600万アクセス、中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は158万人以上(2012年9月8日現在)。中国で多数の著書を出版する一方、日本では『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)などを出版。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。2012年8月、9年間過ごした中国を離れ渡米、ハーバード大学ケネディースクールにてフェローとして赴任。米中関係・中国問題の政策研究に取り組む。趣味はマラソン。座右の銘は「流した汗は嘘をつかない」
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加藤 私も昨年8月にハーバード大学に来る前、上海復旦大学ジャーナリズム学部で半年間、講座学者という立場で授業をもっていました。中国言論界で外国人として発信してきた経験から、学生たちにあえて残酷な話をしましたよ。

「あなたたちがメディアに就職したら、こういうロジックで言論を規制されますよ」とか「当局の“ルール”に従わないで記事を書いたりしたら、あなた方当局に目をつけられ、一生を棒に振ってしまうかもしれない」とか。ジャーナリストを目指す彼ら・彼女に覚悟と心の準備をしてほしかった。

 意外なことに、学生たちは逆に燃えていました。彼ら・彼女らは「私たちが生きている間に中国の民主化を自分達の手で、何らかの形で動かすことができたらハッピーだ」って言うわけですよね。

 そういう話をしたうえで、学生たちに「10年たっても中国では検閲はなくならないだろう。それでもジャーナリストを目指しますか」って聞くと、みんな勢いよく手を挙げる。「だからこそ、ジャーナリストになりたい」って。