加藤 私の知っている学生で、コロンビア大学など、アメリカの大学院に留学してジャーナリズムを勉強している子もたくさんいます。みんな、最終的に中国に戻り、報道・言論の自由を権力からもぎ取るプロセスに参画したいと目を輝かせています。そういう外に出て個の力を磨いた若者たちが、中に帰ってきて、変革のダイナミクスに入っていく流れができつつある。

 僕が最近、一番関心を持っているのは、現状になんらかの問題意識や不満を持っていて、ゆえに目標を持って外に出ていって、帰ってくる若者たちが、中国社会をどう変えていくのかというテーマです。

津田 なるほど。それはアメリカだけじゃなく、日本だったり……。

加藤 それと、香港だったり。イギリスだったり。

津田 外で学んで、中国に戻って、「ああ、やっぱり中国には自由がない」っていう意識を改めて感じて、それをどうやって変えようという意識を持つっていうことですよね。

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加藤 そうです。以前、香港大学でジャーナリズムを学んでいる学生たちと話をする機会があったんですけど、みんな体制や現状に不満をもっていて、香港で報道・言論の自由を体感しながらジャーナリズムを学ぶために来ているって言っていました。つまり、彼はトランジットしているんですよね。

 トランジットと言っても、何を待っているのと聞くと、「中国が変わるのを待っている。中国は確実に変わっていく」って言っていましたよ。

 香港は言論の自由と司法の独立が原則保証されている。この場所でジャーナリズムをやりながら、中国のあり方をみていくのが彼ら・彼女らの昨今のコンディション。やがて、中国では上(当局)と下(人民)とのパワーバランスが崩れるとときがくる。下が上を凌駕するときが来る。そこで、中国社会の変化にコミットしていきたいという若者が少なくない。

 僕が生きているうちに、中国は統一か分裂かっていう分岐点が来ると思うんですよね。そういう歴史の境目に最大限ポテンシャルを発揮すべく、外に出ていった人たちには今からパワーを溜めておいてほしいですね。奮起するタイミングを待つのではなく、自ら作り出していってほしい。僕も当事者として、そのプロセスにしっかり関与していきたいと思っています。

中国メディアは統制があるけど、
打ち合わせもなく、意外と自由

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津田 中国のメディアで面白いのは、さきほど話題に出た「個」という部分。日本で新聞記者や雑誌の記者、それこそダイヤモンド社だったら記者が実名でいろいろなことをつぶやいたり書いていたりすると、読者から「お宅の記者がこんなこと書いてるけどいいのか」って会社側にクレームがつきますよね。

 日本のメディアでは、原稿は副編集長や編集長がチェックして、時には直されて掲載されている。特に新聞だとそれは顕著ですよね。自分が書きたいことを書いても、ときには全部カットされてしまうこともある。結果的に、記者個人が買いたいことではないことを書いていたり、筆が曲がったりすることもある。