短時間で成果を出している人がいる一方、頑張っているのに成果が出ない人もいる。この違いは何だろう? 経営の最前線で20年以上、成果上げられる人と上げられない人の差を研究してきた人物がいる。東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の木下勝寿社長だ。注目の最新刊『チームX(エックス)』は「世界的にみても極上レベルのビジネス書」(神田昌典氏)と評され、デビュー作『売上最小化、利益最大化の法則』は「20年に一冊の本」(人気会計士)と絶賛された。そして今、「やる気に頼らず楽しく続けられる」と話題となっているのがベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。本稿では【がっちりマンデー!!】SNSで「ニトリ」似鳥会長と「食べチョク」秋元代表から「2022年に読んだオススメ本3選」に選抜された本書から一部を抜粋しながら、「最短時間で最大の成果を出す方法」を紹介する。
短時間で最大の成果を上げる黄金法則
いよいよこの連載も100回を迎えた。
ここまで私は、
成果=スキル×「思考アルゴリズム(考え方のクセ)」の黄金法則
を紹介してきた。
短時間で最大の成果を上げたいと思ったとき、多くの人はスキルばかり磨こうとする。
だが、スキルの差はあって3倍。
一方、「思考アルゴリズム」は最大50倍にもなる。
その「思考アルゴリズム」をインストールする45の法則をまとめたのが本書である。
最後に、私がどのように「思考アルゴリズム」をつくってきたか。
ほんのさわりだけお伝えして終わりたいと思う。
1回考えたことは2度考えなくてもいいように
初歩的なプログラムに「if制御構文」というものがある。
ifとは、「もし~ならば」という意味の英語そのままで、「もし〇〇だったら、この処理をする」という条件分岐のための構文だ。
私は日常業務を「もしこの場合はA」「もしこの場合はB」と条件づけで考えて公式化し、1回考えたことは2度考えなくてもいいようにしている。
たとえば、旅行や出張時の「持ち物チェックシート」(▼本書P189)はほとんどif文でできている。
行き先にしても、「国内の場合はAセット」「海外の場合はBセット」とワンタッチで出るようになっている。
仕事でも社員に「この場合はどうなの?」と聞きながら、そこに規則性を見出し、「この場合はA」「この場合はB」というアルゴリズムをつくっていく。
アルゴリズム化で大幅時間短縮
日頃からアルゴリズム化しておくと、毎回判断する必要がなくなり、年間トータルで考えると大幅な時間短縮につながる。
ある広告のクリエイティブの打合せをしているとき、女性社員が、
「広告には季節感が大事なので、3~4月はこのピンク色を使いましょう」
と桜色のピンクを提案してきた。
「なるほど」と思い、そのピンクを使った広告を出稿した。
5月になると、彼女はまたピンク色の広告を提案してきた。
「3~4月は桜の季節だったからピンクがよかったのではないの? 5月もピンクなの?」
と聞くと、
「ピンクといっても、時期ごとに親近感をいだく色味は違うんです」
と言う。
現物を見せてもらうと、確かに同じようなピンクでもよく見れば違う。
それはサーモン系のコーラルピンクだった。
ピンクとひと言でいっても種類はまちまち。
同じピンクでも季節によって親近感をいだく色味は違うことがわかった。
しかし、今後クリエイティブをつくるたびに、ピンクの微妙な違いを説明していては時間がかかる。
そこで「6月ならどんなピンクがいいか」「7月ならどんなピンクがいいか」を社内で相談し、1年間の表にしてみた。
それによって色彩センスが少し弱い人でも、「今、何月か」を確認さえすれば、ピンクのバリエーションを効果的に使えるようにした。
こうした地道な作業を行いながら、本書で紹介した「思考アルゴリズム」をつくってきた。
みなさんのお役に立てたらこれほど嬉しいことはない。
直接本人に質問することの大切さ
本書では、第1章から第4章でさまざまな「思考アルゴリズム」を紹介し、第5章では成功者の基礎的な考え方、土台(OS)をコピーする話をしてきた。
私も多くの成功者からOSをコピーさせてもらった。
成功者のOSを身につける中で、少しでも違和感があったら、「なぜそうしたのですか?」「なんでそう考えたのですか?」と直接本人に質問してきた。
本人に会えない場合は、その人にできるだけ近い人に尋ねてみた。
これが実によかった。
起業初期の事業である北海道特産品のネット通販が軌道に乗ってきた頃、私は北海道特産品のネット通販業界ではそこそこ有名になったが、それほど利益は出ていなかった。
そんなとき、ある成功者に、
「木下さんは利益が出ていないのに有名だ。これはまずい」
と言われた。
さっぱり意味がわからなかったので、
「なぜですか?」
と聞くと、
「利益は出ていないのに、有名だからみんなに注目されて売上の上げ方が世間に丸裸になっている。
ライバルが増えたらすぐマネされる。
儲かっていないのに競合が増えるのは最悪だ!」
さらに、
「経営者として成功するには、有名になることではなく利益を上げることが大事だ!」
とも言われた。
雷に打たれたような衝撃
売上や利益を上げるには知名度を上げる必要があると思っていたが、知名度はユーザーに向けてのみ上げるもので、ユーザー以外に対して知名度を上げるのは間違いだと気づいた。
私は雷に打たれたような衝撃を受け、自分の考え方を根本から変えなければと思った。
実際、その成功者の会社はとても利益が出ていたのだが、どうやって売上を上げているか、まったくのブラックボックスだった。
会社を見せてもらったこともあるが、自社ビルに社名の看板がないし、窓も少なく、何をやっているのかさっぱりわからない。
その後、がんばった甲斐あって、当社の売上がその成功者の売上を超えた。
ほめてもらおうと思ってその成功者を当社の会社見学に招いた。
しかし、成功者は全体のフローを見ながら、
「売上はうちの1.5倍になったけれど、社員数はうちの3倍いる。効率が悪い!」
と言った。
売上は当社のほうが多かったが、利益はその成功者のほうが多かったのだ。
私は規模の拡大について深く考えさせられた。
このように、成功者の教えのシャワーを嫌というくらい浴びながら、自分のOSを徐々に書き換えていったのである。
自分より成果を出していて、自分と考えが違う成功者に出会えたのは本当に幸運だった。
相手の考えが理解できるまでいろいろ聞いてみると、実に発見があるものだ。
多くの人は現状の自分自身を大切にしすぎている。
現状のOSを堅持しつつ、それにつけ足しながら成長しようとしている。
それはある種、自信のなさの裏返しなのかもしれない。
自分の存在価値はどこにあるんだろう?
まわりの人に何を求められているんだろう?
と考えてみる。
なんとか今の自分を認めようとすると、わずかしかない自分のものを捨てられなくなる。
さあ、あなたも今すぐ始めよう
でも、大丈夫。
今あるものをいったんゼロにしても、これからたくさんのものを手に入れることができるのだから。
当時、20代だった私は「すぐに行動できない」大きな弱点があったわけだが、「ピッパの法則」(▼本書P36)をきっかけに「足かせ」が外れ、すぐやる人へ変身し、成果を上げられるようになった。
これからもチャンスは無限にある。
だが、人生には限りがある。
さあ、あなたも今すぐ始めよう!
(本稿は『時間最短化、成果最大化の法則』の一部を抜粋・編集したものです)