つながりたくないから、
5ドル支払ってスマホを預ける!?
鈴木:米田さんは「ノマド・トーキョー」で明日どこに泊まるかもわからない暮らしを実践して、ある意味、人生を一度究極まで振ったわけじゃないですか。で、次はどこへ向かうのかな、ってすごく興味があるんですけど。
米田:それ、みんなから聞かれる(笑)。まず1つはね、僕は今年、2014年のつもりで生きているんですよ。
鈴木:来年について考えながら生きる、ってこと?
米田:今と、ほんの少し先の未来を同時に生きるという感覚かな。だって10年後っていわれたら何をしているかわからないけど、1年後くらいのスパンならどうなっているか、なんとなくイメージしながら実践できるじゃない。
鈴木:それで今年も3カ月終わったけれど、何か発見はありました?
米田:うん、今は外部に答えを求めるというよりも、自分のなかで答えを探すというふうに「内観」する時間を増やすようにしてますね。こうやって人と会ったり体験したりしたことを持って帰って、自分のなかで見つめる作業がしたいというか。まあ最近は、山に登ったり、滝に打たれたりとかもしていますよ。
鈴木:じゃあ、精神的ノマドなのかな?
米田:そうかも(笑)。だって、僕のマイブームはテレビなんですよ。
鈴木:え、テレビ!?
米田:NHKドキュメンタリーとか、すごく内容が濃くて面白いよね。ちょっとインタラクティブものはスピードダウンさせて、歴史に裏打ちされた芸術作品とか職人が作ったものを浴びて、打ちのめされたいんですよ。圧倒的なものに触れてみたい。たとえば僕の場合、自然かな。熊野とか山に登るのもそうなんだけど。まあこの先、インタラクションはずっと続いていくと思うけど、ちょっとだけその先を見たいなという気はしていて。未来ばっかりじゃなくて、歴史や過去、長いタイムラインを体内にインストールしたくなっている。
鈴木:なるほど、面白いねえ。でも、僕も少し似ているのかもしれないけど、greenz.jpではずっと「未来」「未来」「未来」って突っ走ってきたでしょ。だからその反動で、最近「今」に目が向いているんですよ。僕自身、1年半くらい前にぶっ倒れて、3日間ぎっくり腰で動けなくなったことがあって。
その後、講演を依頼されていたピースボートに3週間くらい乗ったんだけど、その間インターネットもつなげず仕事もせず、ただぼけーっとしていた。そこで気づいたんです。「未来」ばっかり見て走ってきたけど、「今」を全然大事にしていなかった、と。もう一回、自分のなかでの偽りのない生き方や暮らしを見つめ直さないといけないな、と思いましたね。
米田:それ、すごく僕も感覚が近いと思う。鈴木くんも、いろいろ見て回ったがゆえに、そこに行き着いたんだろうね。あ、あと僕のもう1つのマイブームは、プール瞑想。25メートルプールを1時間くらいかけてゆっくり往復するんですよ。泳いでいるとさすがにスマホ使わないし、インターネットもしないじゃない?それくらいしないと外部情報から自由になれないんだよ。
そういう情報すべてを遮断して体を緩やかに動かしながら瞑想できるといえば、普段のライフスタイルでは、水の中が手っ取り早いんだよね。ほら、ランニングしてもつい、スマホで走った距離とか計測しちゃうじゃない(笑)。
鈴木:ああ、それでいうと僕の場合、ドライビング瞑想ですね。運転中はケータイとかも通信できない状態にしちゃうし、ラジオも付けない。というか壊れていてつかないから(笑)。するとやることないから自分と向き合えるんです。これがけっこう僕は好きで。
米田:たくさんの人を巻き込んでメディアをつくったり、イベントをやったりして、大騒ぎした結果、2人とも大旋回してそこに帰ってきているのかもしれないね(笑)。まあお金と時間を使って、我々は情報をデトックスする時代にきている気がする。
鈴木:そういえばどこか海外のホテルで、スマートフォン有料預かりサービスが始まっているみたいですよ。つながりたくないから、5ドル払ってわざわざ預かってもらうんだって。あと喫茶店で、圏外を売りにしている店もあるみたい。要は電波妨害装置を使っているんでしょうけど。
米田:「はて、そもそも俺は何がやりたかったんだっけ?」と一回自分の状況をまっさらにして考えるにも、そういうシチュエーションとか時間とか場所を意識的に作らないと難しい世の中になったということですね。