完全なプロトコルを報告していた論文は「268本のうち1本だけ」
その後、より包括的な調査がおこなわれ、臨床試験を含む268本の生物医学論文を無作為に抽出したところ、1本を除いてすべての論文が完全なプロトコルを報告していないことが明らかになった。
つまり、ある研究を再現しようとすると、論文に書かれていること以外の情報が必要になるのだ。
さらに別の分析では、対象となった生物医学論文の54%が、実験に使った動物、化学物質、細胞の種類を完全に記述していなかった。
「情報不足で再現できない論文」に拭えない疑念
これがいかにおかしなことか、考えてみてほしい。論文には研究の表面的な説明しかなく、必要な詳細は数ヵ月をかけて著者とメールでやり取りしてようやく明らかになる(あるいは永遠にわからない)のであれば、そもそも論文を書く意味があったのだろうか。
(中略)ガン研究の再現プロジェクトは、研究を再現する際のさまざまな障害に加えて財政的な問題もあり、対象の研究の数は50件から減り続けてわずか18件になった。
本書の執筆時点では14件について報告されており、元の研究の重要な結果が明確に再現されるものが5件(白血病の酵素に関する研究を含む)、一部が再現されるものが4件、再現に明らかに失敗しているものが3件(バクテリアと大腸ガンの研究を含む)、結果を解釈することさえできないものが2件だった。
再現は、率直に言って、たやすいことではない。
(本稿は、『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』の一部を抜粋・編集したものです)