阪急うめだには負けへんで!
「食の阪神」独自の進化に期待
阪神梅田に、「食の阪神」として競合と一線を画す独自の進化について尋ねてみた。
21年の全館リニューアル以降の施策では、食品売り場の総菜などをパック詰めにして並べた「コンビニデリカ」が好評だという。百貨店の総菜といえば1店ごとの量り売りが多く、忙しい時間帯に長時間の待機が生じる。このレジ待ちを避けるために、普通のコンビニやスーパーと同じようなパック詰め商品を扱うようにしたそうだ。
また、阪神梅田といえば地下1階の「スナックパーク」も有名だ。リーズナブルに食事やお酒を楽しめるスポットとして人気で、建て替え工事で15年に営業終了した際は、「一等地でワンコインの食事処など、いくら阪神でも存続させないだろう」とうわさされたものの、18年に見事に復活。その人気は健在だという。
催事では、いわゆる“イロモノ商品”が話題を呼ぶことも多い。近年ではバレンタイン用の商品として、ハート形にカットしたステーキ肉やマグロの刺し身、皮がピンク色のハート形一口ギョーザなどがヒットしたそうだ。
百貨店業界全体を見渡すと、1991年に9.7兆円を誇った売上高は、2022年には5兆円規模に縮小し、店舗の撤退や業態転換も目立つ。しかし、4社6線の鉄道が乗り入れる大阪駅・梅田エリアでは、22年に過去最高の売上高2611億円を記録した阪急うめだを筆頭に、業態転換による大型商業施設も増えたことで、新たな競争が激しくなっているといえるだろう。
アパレルやジュエリーなど高単価商品で収益を確保する阪急うめだは、阪神梅田からすると、とうてい追いつけない存在である。しかし、そこで逆張りの戦い方を身に付けたのが阪神梅田だ。今後も独自の強みを発揮して、あっと驚く仕掛けで客を楽しませてほしいものだ。
巽尚之『日本一の「デパ地下」を作った男~三枝輝行 ナニワの逆転戦略』(集英社インターナショナル)
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