百貨店だけど「庶民の台所」に振り切り!
「毎日お祭りのような売り場」で成功
阪神梅田は2021年に全面リニューアルし、食品関係の売り場面積を4割近く増床、食品関係で売り上げの6割を稼ぐ目標を立てた。なぜ、明らかに利益率が低い食品販売に着目し、ここまで振り切った戦略に転換できたのだろうか。発端は、阪急と阪神が同じグループ傘下になる前の時代にさかのぼる。
バブル経済の崩壊後、「食の阪神」として復活を遂げた頃の様子は、阪神百貨店社長・会長職を務めた三枝輝行氏に関連する本や、氏のラジオ番組などに詳しい。
阪神梅田は長らく、通りを挟んだ真向かいに位置する阪急うめだに、売上高や品ぞろえで勝つことができなかった。特にファッション関係では、主要取引先から「高価格の売れ筋は阪急、手頃な庶民向け商品は阪神」と対応の差をつけられていた。そうした状況で唯一勝ち目があったのが食品だった、というわけだ。
ただし、食品売り場なら阪急にもある。そこで梅田阪神は、従来の百貨店のような高級志向ではなく、あくまで「庶民の台所」に徹することにした。ただ、それだけでは普通のスーパーマーケットと変わらない。そこで、実演販売や値の張るワインを無料で試飲できるなど、「毎日がお祭り」のような非日常的な演出を意識したという。
狙いを定めた活気のある食品売り場づくりは見事に成功。例えば、関西の至る所で買える「御座候」(姫路発祥の回転焼き。関東では今川焼き)が、「阪神梅田の実演販売が一番おいしい」といった評判まで立つほどに。こうして、庶民の懐に優しいのに特別感もある食品売り場が誕生した。
催事も見直そうと、1966年から駅弁大会を開催する京王百貨店に運営のノウハウを学び、01年1月に第1回駅弁大会を開催。今では実演駅弁21社、物産22社、品ぞろえ320品という、西日本トップクラスの食イベントに成長を遂げた。