半導体が環境に与える影響を危惧
消費電力量の抑制も課題

 現在の半導体を取り巻く情勢にはいろいろと課題があり、現在の勢力図がこのまま続くとは限りません。まず、日本における熊本への工場誘致のように、サプライチェーン分断のリスクを回避するため、地政学上、より安全な地域にファウンドリーを置く動きが各国で始まっています。

 また、これからのプロセッサー需要をけん引するのはAIと考えられますが、AIに対する規制も各国で進んでいます。ただ、AI規制に関する考え方は各国により温度差があり、グローバルで統一が図られるまでにはまだ時間がかかりそうです。それまでは、半導体業界もその動向に影響を受ける可能性があるでしょう。

 先述したように環境への影響も無視できません。スタンフォード大学人間中心人工知能研究所(HAI)が公開する「Artificial Intelligence Index Report 2023」は「AIシステムが環境に深刻な影響を与える可能性がある」との最新の研究を紹介。オープンソースの自然言語処理AIモデル「BLOOM」のトレーニング実行が、ニューヨークからサンフランシスコへの片道旅行1人分の炭素排出量の25倍に当たる炭素を排出したと指摘します。

 また、AIスタートアップのHugging Faceとカーネギーメロン大学の研究では、「画像生成AIモデルが画像を生成するにはスマートフォンをフル充電するのと同じくらいのエネルギーが必要」として、特に汎用型AIモデルの環境への影響を意識する必要があると述べています。

 日本政府の半導体事業への支援においても、消費電力量の抑制が意識されています。経済産業省は「AI活用には多量の計算が必要となり、電力消費量の低減が課題となるおそれがある」「AIなどのソフトウェアとハードウェアの協調設計による専用半導体の活用が必須」として、AI半導体など次世代技術の研究開発を支援。2023年12月には、Preferred Networksなどが共同で進める、AI向けの消費電力を抑えた半導体など「超高効率AI計算基盤の研究開発」に対して200億円の補助を決定しています。