お金のリアリティという話で言えば、「宝くじが当たるとしたらいくら欲しいか」と聞くと、多くの学生が「当たるなら、多ければ多いほどよい」と答えます。しかし実際に働いて、どのくらいの労働がどのくらいの対価になっているか、生活するのにどのくらいのお金が必要なのかを知っている中高年の回答は違います。もちろん10億円という人もいるかもしれませんが、「1000万円くらい」などとある種の適正な額を答える方が多いです。
 
 それは、「住宅ローンが残っているから、1000万円あると助かるなあ」「これから子どもが大学に入るから学費4年分の足しに1000万円あるといいなあ」など、具体的な使い道に紐づいてはじき出された額なのです。

お金を考えることは
キャリア選びにもつながる

 キャリアと生活感に根ざしたお金の関係を考える――これはまだ学生が持っていない、そして今後必要な視点です。生活感が具体的に見えれば、働き方についてのビジョンも明確になります。

 たとえば、どこに住みたいかという具体的な勤務地のイメージが浮かびます。趣味が観劇や映画鑑賞ならある程度の都会でないと難しいでしょう。反対に、キャンプや釣り、山登りなどが趣味であれば、地方都市がいいかもしれません。そういうことも含めて、どういう職業や企業なら自分が希望する生活を送れるのかということもわかってくるのです。

 生活に紐づいたお金の感覚を持ち、それとキャリア観を関係づけていく。その視点があれば、就活しているときのデータの見方、企業の人の見方が変わります。より、自分のライフスタイル、自分の生きたい人生に即した就活もできるのです。親はぜひ、就活に臨む息子・娘にお金の話をしてあげてください。

(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)