親は子の就職先に対して、「そこはブラック企業なんじゃないの?」などと言う前に、会社選びの参考になる具体的な議論をすべきなのです。

 たとえば、最近ある企業が新卒の初任給を引き上げたことがニュースになりました。前述のように税金や社会保険料を差し引いた際の手取り額もわかるでしょう。また2年目は、1年目の年収を基準に課税されるので、手取り収入は初年度よりも減ってしまいます。そうしたお金の真実を見つめることで、適切な職業観や就職観も育ってきます。

就活生が「お金」を学ぶための
とっておきのツールとは

 とはいえ、「お金の話は子にしづらいし、うまく伝えられそうにない」と抵抗を感じる人も多いでしょう。そんな人には、金融庁がつくった以下のHPが参考になります。

https://www.fsa.go.jp/teach/chuukousei.html

 ここでは、中高生向けに金融・経済教育の情報を紹介しています。具体的には、家計管理や生活設計、具体的な年収や生活費のシミュレーション、預貯金・保険・クレジット/ローン・投資に関して最低限知っておくべきことなど、中高生向けとはいえ、社会人になろうとしている学生が知っておくべき金融に関わる情報、お金の循環などがわかりやすく網羅されており、非常に参考になります。「生まれてからかかったお金」というコーナーもあり、定期代、携帯代、教育費などのサンプル例やシミュレーションのツールがあります。

 10年、20年前なら親が子にお金の話をするのはややタブー視されていたかもしれません。しかし今や、金融庁がこんな立派なHPを作っているように、お金の話はタブーでもなんでもありません。世界ではすでにそうですが、むしろ生きていくために必要なリテラシーであり、大切なことです。

 自分が今の暮らしをするのにどのくらいのお金がかかっているのかを把握しておくことは、今後の生き方を考える上での基礎知識になります。子が将来、より安心して生活できるために必須の知識とも言えるでしょう。働くとは何か。もちろんやり甲斐という面もありますが、やはり基本はお金を稼ぐことです。収入があり、それをどう使うか、その感覚を持っており、伝えられるのは親しかいません。