子どもができる三つの役割

 では、実際の「子どもの役割」とはどんなものでしょうか。都立駒込病院の医療ソーシャルワーカー長谷川尚子さんは三つのポイントをあげてくれました。

 一つ目は、親の意向を聞くことです。がんになった本人は、なかなか現実に対応できないものです。まずは聞き役に徹し、親の不安や悲しみを受けいれ、そのうえで親がどんな治療を望んでいるか聞いてください」

 二つ目は、正確な情報を集めること。「がんの情報は玉石混交です。『これでがんが消えた!』などの情報をうのみにする患者さんもいますが、誤った情報は貴重な時間とお金と体力を奪います。それが適切な治療か、主治医にご相談ください」

 三つ目は、サポート態勢を整えること。「医療費の制度では、高額療養費制度の限度額認定証の申請を早めにおこなってください。治療後の生活のサポート態勢の準備として介護保険の申請も必要です」

 一方、「子どもには親と医師のコミュニケーションの仲介役になってほしい」と話すのは「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」理事長の山口育子さんです。

「医療用語はむずかしいうえに、医師はさまざまな可能性まで含めて説明します。私の母は、治療後の合併症の可能性の説明を受けたとき、見る見る真っ青になりました。合併症が全部起こると思ったようです。そんな誤解に気づけるのも子どもだから。親の代わりに質問して確認したいものです」

図表2:治療の大まかな流れ治療の大まかな流れ イラスト/タソ
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 ここからはより具体的に、治療の前の子どもの役割で気をつけておきたいこと、ポイントを紹介していきます。大事なことは「親が何を望んでいるか」です。子どもは情報を提供してサポートするとよいでしょう。

<1>検査結果を聞く

 親から「がんが見つかった」と言われたら、あわてず騒がず詳細を聞きましょう。高齢になると順序立てて話せない場合もありますので、子ども側から「それは何月何日?」「検査はしたの? どんな検査?」「次の外来はいつ?」など一つひとつ聞く必要があります。

「あやふやな部分もあると思いますが、親が答えられる範囲で聞き、追求しすぎないでください。不明な部分はメモし、次の外来に同行して医師に質問するといいでしょう」(長谷川さん)

 医師の説明を聞けば、検査結果や病気の全体像が正確にわかります。特に今後の治療方針について決めるときには、できるだけ同席したいものです。

「高齢でなくても、自分の病気の説明を冷静に聞くのはむずかしいので、複数の耳と頭で聞くことが大切です。秘書になったつもりで医師の説明をメモし、本人に確認を。メモ用のノートは、医師に図を描いてもらうこともできるよう大きめを用意し、常に持ち歩きましょう」(山口さん)