<2>不安を受け止める
がんと診断されて、不安を感じない人はいません。
「親に、なんて声をかけていいかわからないという人は多いのですが、話を聞くだけで十分。子どもはつい励ましすぎたり、後ろ向きな発言を否定したりしがちですが、それは相手の心を閉ざします。不安はそのまま聞いて、そのまま受け止めるようにしましょう」(山口さん)
「離れて暮らしている親には特に、『ひとりぼっちじゃないよ』『いつでも相談に乗るよ』と伝え続けることが大切だと思います」(長谷川さん)
<3>治療法を親と相談する
治療法を決断するのは、あくまでも親です。子どもは本やネットなどでいろいろ調べ、自分なりの「これがベストな治療法」を決定しがちですが、それが親の希望と食い違うこともあります。その場合、治療を受ける本人である親の気持ちを尊重するようにしましょう。
「ただ、親がエビデンス(科学的根拠)のない治療法を望んでいる場合、客観的なデータを示して引き止めることも必要です。これまでの治療を中断して自由診療の治療を受けた結果、悪化して救急搬送されてくるケースもあります」(長谷川さん)
手術や抗がん剤治療といった標準治療を選択しても、治療後の生活の質(QOL)が著しく低下することもあります。医師や看護師に治療後の見通しを事前に聞き、退院したあとも家で暮らせるのか、家族はどんなサポートができるのかなども含めて、治療法を検討する必要があるでしょう。
「治療の選択は『どう生きるか』の選択でもあります。本人の価値観や人生観を十分に聞き、そこからひもといていっしょに考えることが大切です」(北見さん)
<4>親にとって「いい病院」とは
がんの診断が出たら、あれよあれよという間に治療スケジュールが決まります。もし別の病院での治療を希望する場合、早めに主治医に伝えましょう。
朝日新聞出版 (編集)
定価1,320円
(朝日新聞出版)
「治療が始まってしまうと簡単に病院を変えることはできません。後悔しないように病院を選んでください」と長谷川さんは言います。選ぶポイントとしては、希望する治療が受けられるか、その治療法の実績があるかという点が重要です。病院ごとに症例数を公表していますし、いい病院ムックの「病院ランキング」も参考になるでしょう。
「高齢者にとっては、通いやすいかどうかも大切な条件です。外来で抗がん剤治療や放射線治療を受ける場合、毎日のように通院する必要があります。なるべく近い病院や、交通機関の乗り継ぎが少ない病院を選びたいですね。遠い病院を選ぶ場合、家族による送迎が必要な場合があります」(長谷川さん)
高齢者の場合、がんのほかに持病をかかえているケースもあると思います。その場合、がん専門の病院よりも、全身を診てもらえる総合病院のほうが良いケースもあります。主治医に相談したうえで決断してください。
(取材・文/神 素子)
公益財団法人日本対がん協会 相談支援室マネジャー 北見知美さん
都立駒込病院 患者・地域サポートセンター 長谷川尚子さん
ささえあい医療人権センター COML代表 山口育子さん
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』より
※AERA dot.より転載