パンデミック中に大混乱した統計作成

 図1は外国パック旅行の価格の推移を示したものだ。

 緑の線の右端で急に上がっているのが目につく。これが2月の急上昇に対応している。

 ただし、2月に急に上がったといわれると、違和感を抱く人が少なくないだろう。海外旅行が高くなったのは2月に始まった話ではなく、昨年も高かったからだ。

 実はこれにはカラクリがある。

 図1の黒線はパンデミック以前からパンデミック初期にかけての価格だ。しかし2020年12月を最後に黒線は切れている。

 これはパンデミックの混乱により、総務省統計局が海外旅行の価格に関する情報を収集できなくなったために起きた現象だ。コロナ禍は実生活にさまざまな影響を及ぼしたが、統計の作成にも甚大な影響を及ぼしたのだ。

 しかし統計局としては、海外旅行の価格の収集ができないからといって、消費者物価統計の作成を中断するわけにはいかない。そこで苦肉の策として行ったのは、21年1月以降の海外旅行価格は前年の同月と同じと仮定する方法だった。

 今から振り返ると、この仮定は決して褒められたものではない(詳細は後述)。しかし、パンデミックの混乱の中ではやむを得ない措置だったかもしれない。21年1月に始まる緑線は、この「前年と同じ」という仮定の下で毎月公表されてきた値を示している。同様の手法による公表は23年12月まで続いた。

 ただし、パンデミックの混乱で海外旅行の価格を収集できない事態が23年12月まで続いていたわけではない。統計局は23年3月には収集を再開した。図の青線は再開後の価格を示している。

 再開後の価格とパンデミック前の19年頃の価格を比べると約1.6倍になっており、海外旅行の価格が高騰したことがはっきり分かる。

 整理すると、黒線は収集をやめる前の価格、青線は再開後の価格であり、どちらも正確なデータだ。しかしその間に26カ月のブランクがある。

 問題はここをどう埋めるかだ。このブランク中のどこかのタイミングで価格が上がったのは間違いないが、それがいつなのかをどのように突き止めればよいのか。