大正製薬「低すぎPBR」の原因とは?ロート製薬と明暗がハッキリ分かれた事情Photo:PIXTA

大衆薬大手の大正製薬ホールディングスは、創業家主導でMBO(経営陣による買収)を実施した。前編では、大正製薬HDとロート製薬の決算書を比較し、収益性の違いを背景に、両社のPBR(株価純資産倍率)に大差がついていることを解説した。後編では両社の業績がどのように変化したのかを時系列で比較し、大正製薬HDの株価が低迷したもう一つの要因を探ってみよう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

5年間で増収減益の大正製薬HD
増収増益のロート製薬

 前編では、大正製薬ホールディングス(以下、大正製薬HD)とロート製薬の決算書を比較し、収益性の違いがPBR(株価純資産倍率)の差を生み出している一つの要因であることを見てきた。

 大正製薬HDは、23年3月期のROE(自己資本利益率)が約2%と低く、PBR※も1倍を大きく下回る水準だった。一方で、ロート製薬の23年3月期におけるROEは約12%でPBRは約3倍と、大差がついた。
編集部注※両社とも23年3月31日時点の株価(終値)を基に計算

 さて、ここからは、両社のPBRの差を生み出している、収益性以外の「もう一つの要因」について解説しよう。

 この要因を読み解くヒントは、PBRの展開式にある。

図表:PBR(株価純資産倍率)の展開式筆者作成 拡大画像表示

 上記のPBRの展開式によれば、PBRはROEとPER(株価収益率)の掛け算で表される。ROEの差がPBRに影響を与えるのは、すでに前編で解説した通りだ。

 ここでの焦点となるのは、PBRに影響を与えるもう一つの指標であるPERだ。