コロナ禍で激増した有害なコミュニケーション
さらに、SNSでは、同じような好みを持った人同士がフォローし合うことが多く、加えて、SNSプラットフォームのアルゴリズムとして自分の見たい情報が優先表示され、自分の価値観や好みに合わない情報からは切り離される仕組みが組み込まれています。
その結果、あたかも孤立した泡(バブル)の中に入り込んでしまうというような特徴があり、これを「フィルターバブル現象」といいます。このことを意識していないと、まるで自分のSNSに流れてくる話題や意見を、自分だけでなく全世界の人も目にしているように思えてしまうこともあり、攻撃を受けたときには周囲のすべての人からバッシングされているように感じる場合もあります。
また、集団で話し合っているときにある人を悪く言い始めたら会話が異様に盛り上がったということはありませんか? 集団でいると極端な結論になりやすいことを心理学用語で「集団極性化」といいますが、これはネットでもしばしば生じている現象です。
誰かが一言書いたコメントで、その人がすごく素晴らしい人かのように何万もの「いいね」で賞賛されたり、ひとたび批判のターゲットにされると瞬く間に大勢から攻撃されるようになり、そのターゲットになったときにはどうにもならないところまで追い込まれてしまったりする。こうしたことが意図せず起きてしまうのがネットコミュニケーションの世界と言えます。
数百万件を超えるウェブサイトやティーン向けのオンラインチャットプラットフォームを分析したあるリサーチによると、コロナパンデミック下では、ネット上での差別表現を含む有害なコミュニケーションが劇的に増えたことがわかっています。
オンラインチャットでの主に10代の若者・子ども同士の通信でのヘイトがパンデミック前と比べて70%も増え、オンラインゲームなどでの有害なコミュニケーションが40%も増えたとも報告されています。また、アジア人に向けられたネット上でのヘイトスピーチは倍増したことも報告から明らかになっています。
コロナ禍が落ち着いてきた今日この頃でも、日本では経済的な不安や雇用の問題など、まだまだ不安要素はあって人々の心が休まらない状況が続いていると思います。
ネガティブなコメントを受け取った側のメンタルヘルスも心配ですし、誹謗中傷のコメントて゛溢れているSNSを見てしまう人たちの心にも悪影響を与える可能性があると心配しています。