工業型の畜産・養殖に注意しよう
そして、今や全世界の家畜は約750億頭まで増えている。なんと全人口の10倍だ。
「アマゾン大規模火災」「毎分、東京ドーム2個分の森林が消滅」という報道は何度も耳にする。その原因の大半が、この異常な数の家畜を飼育する工業型畜産によるものとされる(※14)。
ちなみに、「魚介類」は日本の先祖が太古の昔から食べてきたものだから、我々の体に合うし消化器官への負担も少ない。
だが工業型の養殖魚には、前述した抗生物質の過剰投与リスクがある上に、周りの水域を著しく汚染している。
それを避けるためには、オーガニック認証のものか、サステナブルな方式による養殖もの(ASC認証)を選ぶといい。
家畜肉と工業型の養殖魚の摂取量を減らすことは、健康だけでなく環境にもいいと、覚えておいてほしい。
2021年、成長速度が2倍という「遺伝子組み換え種の養殖サーモン」がアメリカで販売開始され話題となった。この遺伝子組み換えサーモンはまだ日本には入っていないが、我々は絶えず注視しておくべきだろう。
消費者として知っておくべき日本独自の不思議な表記ルールがある。商品に「鮭」と書かれていれば天然だが、「サーモン」だとほとんどの場合が養殖なのだ。サーモン(Salmon)とは、鮭を意味する英単語なので多くの方が知らずに買っている。
なお天然魚では、マグロやカジキなどの大型魚は、食物連鎖の過程で水銀が濃縮蓄積されているため避けた方がいい。実際に、水銀の含有量を調べると際立って高くなっている。
おすすめの天然魚は、持続可能な漁業(MSC認証)で獲られた小型魚だ。
最近では、「ASC認証」や「MSC認証」は通販やAEONを筆頭に、大手スーパーでの取り扱いも増えたので買いやすくなった。
安価な大量生産フードにも注意
「⑤化学処理された油」の代表格、安価な「マーガリン」「ショートニング」「サラダ油」も口にしないないよう努めよう。
「マーガリン」「ショートニング」は、動脈硬化を引き起こす悪名高き「トランス脂肪酸」が多量に含まれている。世界保健機構(WHO)が警告を発し根絶宣言したことで、欧米では続々と規制が進んでいるが、日本では野放し状態だ(※15)。
ちなみに体に良さそうな響きの「サラダ油」は、安価な海外の遺伝子組み換え(GM)作物を薬剤で混合させて大量生産されたものが大半を占める。
両方ともコンビニなどで売られる多くの安価な食品に使われているから注意しよう。例えば、インスタントラーメン、パン全般、スナック菓子、チョコレート、クッキーなど。
体の機能を高め、体に教えてもらう
スペースに限りがあるので全ては書き切れないが、食材に関する最低限知っておくべき注意点をまとめてみた。
ただし「食の常識」は、科学の進歩によって日々更新されているため、勉強を続ける必要がある。だがそれ以上に、「体が違和感を覚えている」「舌や消化器官が拒否している」といった、あなたの「身体感覚」に敏感になってもらいたい。
わずかな体の異変や不調を感じたならば、その食材は一度やめてみること。
我々のオーガニックデバイスは、生活習慣によっていくらでも健全化できる。それは優秀な装置となって、巷にあふれる言説などより正しい答えを教えてくれるのだ。
さらに、「一時的な摂取」であったり「少量」であれば、生まれつき備わった「デトックス機能」によって体外へ排出してくれる。運動習慣があって健康であれば、その機能はより高くなっているだろう。
添加物だらけのコンビニ食、過剰な塩と不健全な油を使うファストフード、毒性の高いマグロや家畜肉、白砂糖やトランス脂肪酸が多用されたスイーツは──毎日の「主食」ではなく、「特別な嗜好品」や「緊急食」と考え──どうしても食べたい時や他に選択肢がない時だけ、ありがたくいただけばいい。
「なにごとも過剰・行きすぎはダメ」というミニマル主義の理念と、【超ミニマル・ライフ3原則】の「①体の負担を最小化してパフォーマンスを最大化する」を忘れず、ここで紹介した食材の摂取はできる限り最小限にしよう。
そして、たとえどんな食品だとしても、我々を生かしてくれている「命」だということを忘れず、「いただきます」と感謝しながら自分の命の一部にさせてもらおう。
(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)
※1 Aykan N. F. 「Red Meat and Colorectal Cancer」Oncology reviews, 9(1), 288.(2015)
※2 H Du, M Kakkoura, K Tim, Z Chen, the China Kadoorie Biobank study, Dairy intake and risk of major cardiovascular events: a prospective cohort study of 0.5 million Chinese adults, European Heart Journal, Volume 42, Issue Supplement_1, October 2021, ehab724.2414 (2021)
※3 消費者庁「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」(2022年4月)
※4 Wang, M., Yu, M., Fang, L., & Hu, R. Y. 「Association between sugar-sweetened beverages and type 2 diabetes: A meta-analysis」Journal of diabetes investigation, 6(3), 360-366. (2015)
※5 Hu FB, Stampfer MJ, Manson JE, Rimm E, Colditz GA, Rosner BA, Hennekens CH, Willett WC.「Dietary fat intake and the risk of coronary heart disease in women」N Engl J Med. 337: 1491-1499. (1997)
※6 家森幸男『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』集英社インターナショナル(2021)
※7 ロイター通信「砂糖に依存性あり、ラットで証明=米研究」(2008年12月11日)
※8 Schulte EM, Avena NM, Gearhardt AN. 「Which foods may be addictive? The roles of processing, fat content, and glycemic load」PLoS One. Feb 18;10(2) (2015)
※9 F.L.P. Soares, R. de Oliveira Matoso, L.G. Teixeira, Z. Menezes, S.S. Pereira, A.C. Alves, N.V. Batista, A.M.C. de Faria, D.C. Cara, A.V.M. Ferreira「Gluten-free diet reduces adiposity, inflammation and insulin resistance associated with the induction of PPAR-alpha and PPAR-gamma expression」Journal of nutritional biochemistry, 24, pp. 1105-1111 (2013)
※10 I Nathan, AF Hackett and S Kirb「A longitudinal study of the growth of matched pairs of vegetarian and omnivorous children, aged 7-11 years, in the North-West of England」Nature(1997)
https://www.nature.com/articles/1600354.pdf?origin=ppub
※11 Penny Rumbold, Nicola McCullogh, Ruth Boldon, Crystal Haskell-Ramsay, Lewis James, Emma Stevenson and Benjamin Green. The potential nutrition-, physical- and health-related benefits of cow’s milk for primary-school-aged children. Cambridge University Press: 27 April 2021
※12 林英恵『健康になる技術大全』ダイヤモンド社(2023)
※13 ロイター通信「加工肉に大腸がんリスク、WHO専門機関が報告」(2015年10月27日)
※14 AFP BB NEWS「牛肉と大豆、アマゾン森林火災に関わるブラジルの2大産業」(2019年8月25日)
Greenpeace「アマゾン火災と『工業型畜産』」(2019年9月2日)
※15 農林水産省「トランス脂肪酸に関する各国・地域の規制状況」(2022)