これに対して、社員側の受け止め方は以下のようなものだろう。
・地方出身者の若手には、家賃補助は可処分所得が増えてありがたい。
・家賃補助が切れたタイミングで、持家を検討し始めよう。
家賃補助を気にすると
いつまでも家を買えない
こういう考え方になると、直近ではただでさえマンション価格が高騰する中、住宅購入の検討時期が遅れる人が多くなる。購入価格の高さにひるみ、決断しにくくなる人が後を絶たないのだ。そうして、先送りし過ぎて45歳になってしまうと、80歳までに住宅ローンを完済できないので、35年でローンを組めなくなる。
ローン期間が短くなると月の返済額が増えるため、それも頭が痛い問題として、さらに購入の決断が鈍る。その上、定年を迎えた後に住宅ローンの返済期間が20年以上も残ることがある。すでにマンション価格は十分に高く、年金で支払える返済額になりそうにない。
アベノミクス以降、11年間マンション価格が上がり続けた結果、巷では「購入するタイミングを見極めるのが難しかった」という人がいる一方、「高騰した価格は下がるのではないか」と不安になる人もいた。いずれにしても持家購入の決断はできなかったことに変わりはない。
家賃補助があるためマンション購入をためらう理由は1つで、当面のキャッシュアウトが少ないことに尽きる。確実に10万円のキャッシュアウトを抑制できる賃貸の家賃補助と、持家を購入して将来的に資産価値が上がるまで家賃補助以上の資産形成を望みにくいケースとでは、目の前の確実な家賃補助を選ぶことが多いだろう。
計算してみると、7割の家賃補助があるケースを上回るには持家相場が15%超上昇しなければならない。この10年について結果論で言うと、70%超上昇しているので、持家の方が得だったことになる。