みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜ少子化が進んでも高齢者寄りの政策が多いのか?Photo: Adobe Stock

2023年の出生数は75万人! さらに少子化が進む

 厚生労働省の発表によると、2023年の出生数(速報値)は前年比5.1%減の75万8631人となりました。1899年以降初めて80万人割れとなった2022年よりもさらに少子化が進みました。出生数が100万人を割り込んだのが2016年であり、80万人割れの時期(2022年)が2017年時点の国の推計より11年も早かったことから想定を大きく上回るペースで少子化が進んでいることが分かります。

 私の母校である宮城県にある小学校は少子化の影響で近隣の3つの小学校と統合しました。私が小学生だった頃は1学年48名でした。今年の新入学も48名と4つの小学校が統合して同じ児童数ということで特に地方の少子化が深刻であることを実感します。

 2022年の合計特殊出生率は前年から0.05ポイント低下し、1.26となり、2005年と並び過去最低。先進国の中でも長年低位となっています。

なぜ少子化が進んでも高齢者寄りの政策が多いのか?

日本の子供・子育て支援予算は、フランス、スウェーデンの半分程度

 かつてより少子高齢化が進んでいる日本ですが、その要因の一つに子供・子育て支援に関する予算が少ないことが指摘されています。

 内閣官房の資料によると2017年時点の子供・子育て支援の予算はGDP比で1.79%ですが、これは子育て支援先進国のフランスやスウェーデンの半分程度の水準です。

なぜ少子化が進んでも高齢者寄りの政策が多いのか?

 私も3人の子供を育てていますが、食費・娯楽費・衣料費などの他、習い事や塾代など想像していた以上の出費があります。経済的な理由で出産をためらうのもよく分かります。

投票全体に占める30歳代以下の割合は18.9%

 しかしなぜ日本はこれほどまでに少子化が深刻にもかかわらず、子育て支援の予算が少ないのでしょうか?

 その理由の一つに若者の投票率の低さがあります。2021年のOECD調査によると、加盟国の中で国政選挙における若年層(22~29歳)の投票率がもっとも低かったのは日本であり、世界的に見てもいかに日本の若者が選挙で投票していないかが分かります。

 特に日本は少子高齢化が進み高齢者の比率が高い現状から投票総数に占める若者の投票数の割合がとても少なくなります。総務省から発表されている2022年10月1日現在の年代別人口と2021年の衆院選の投票率を掛け合わせると下記のようになります。

 なんと30歳代までの全体に占める割合は18.9%と5分の1にも満たず、40歳代まで入れても3分の1程度です。この状況では政治家が高齢者寄りの政策を打ち出す背景も納得できますね。昨今の政治がシルバー民主主義と言われる所以です。

なぜ少子化が進んでも高齢者寄りの政策が多いのか?

若者の声を反映させるためにネット投票を導入すべき

 このようないびつな投票比率になっている現状を改善し、子育て世代の意見が届く政治に変えていくために若者の投票率を上げる必要があります。しかし、そうは言っても現役世代は仕事や子供の行事などで忙しく、なかなか投票に行けないという事情もあります。

 ベルギーなどのように投票を義務化して投票しないと罰金を科すということもありだと思いますが、まずは手軽に投票できる制度にすべきだと思います。アメリカでは美術館やスーパー、美容院、プールなどいろんな場所で投票できるようで、わざわざそのために時間を作るというハードルは低そうです。

 また気軽という意味で一番効果が高いのはネット投票ではないでしょうか。ネットで投票ができれば投票をするハードルは一気に下がります。天気が悪くて投票に行く人が少なくなり、特定の党に有利になることも無くなりますし、集計のスピードも格段に速くなります。初期投資は莫大に掛かると思いますが、現在の投票所運営の社会的なコストを考えれば安いものだと思います。

 実際エストニアでは国政選挙もネット投票が導入されています。不正アクセスの問題など課題は多いと思いますが、馬券の購入などは随分昔からネットが利用されていますが大きな問題が起きたということはあまり聞きません。多少のリスクはあるかもしれませんが、それ以上のメリットがあるのではないでしょうか。

 コロナ禍をきっかけにオンラインの仕組みも整備され、社会の認識も変わりました。少子化に歯止めを掛けるためにも、是非ネット投票の導入を進めてほしいものです。

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)