iDeCoと新NISAは、両方に加入すべきなのか? どちらかを選ぶなら優先すべきはどっち?

――実際に、「長期・積み立て・分散」を実践するのに活用するとよい制度はありますか?

 お得な非課税制度である「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「新NISA」です。通常、運用益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoと新NISAを活用して投資をすると運用益が一切非課税となります。投資で得た利益が丸ごと手元に残るため、よりお得に資産を増やしていくことができるのです。

――iDeCoと新NISAは、普段からニュースや雑誌などでよく目にしますし、お得な制度であるなら、ぜひとも活用したいです。やはり、両方に加入するのがベストなんでしょうか? また、もしどちらかを選ぶなら優先すべきはどっちでしょうか?

 新NISAは非課税期間が無期限なため、生涯にわたって非課税での投資が可能ですが、iDeCoでは掛け金を拠出できるのは65歳まで(※)のため、50代以降で加入しても十分な投資期間を取ることができない可能性があります。そのため、どちらか一方を選ぶのであれば、優先すべきは新NISAでしょう。また、新NISAは途中で自由にお金を引き出すことができるのに対して、iDeCoでは原則60歳まで出金ができないため、使い勝手という意味でも新NISAに軍配が上がります。

※25年以降、70歳未満になる見込み

 一方で、税制優遇に関してはiDeCoの方が優秀です。新NISAで税制優遇が受けられるのは運用時だけなのに対して、iDeCoでは拠出時・運用時・受取時の三つのタイミングで税制優遇を受けることができるため、絶大な節税効果を期待できます。また、お金を途中で引き出せないという仕組みは浪費の防止にもつながるため、貯蓄が苦手な人にとってはむしろメリットともいえるでしょう。

 今、50代で65歳まで動かさない貯金があるのであれば、ベストはその貯金からiDeCoへ拠出、余裕資金でNISAへ拠出という形で両方活用するとよいでしょう。50代であればiDeCoも10年程度の運用が可能なので、高い節税優遇も享受できます。

 ただし、余裕資金が少なく、新NISAへの積み立てが精いっぱいという方は、無理してiDeCoに加入する必要はありませんよ。一方、60代になるとiDeCoではほとんど運用期間を取れないため、新NISA一本に集中することをお勧めします。

――二つの制度を始めるに当たり注意点はありますか?

 投資は余剰資金で行うことです。投資にお金を回し過ぎて、病気やケガなどで失職したり何らかの事情で臨時の支出が発生したりした際に生活が揺らいでしまっては本末転倒です。そうならないためにも、投資を始める前にある程度の現金は保有しておく必要があります。具体的には、毎月の生活費の7.5カ月分以上の現金が手元にあれば、安心して投資に臨むことができると私は考えています。例えば、毎月の生活費が30万円の人であれば、投資を始める前に生活費の7.5倍の225万円は現金で保有しておきたいところです。

今回は、投資初心者の方に向けて、投資の必要性や王道の投資手法について解説しました。4月19日公開の第2回では話題の新NISAについて、4月26日公開の第3回ではiDeCoを深掘りしていきます。

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 【監修者Profile】

横山光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、マイエフピー代表
「消・浪・投®」の家計管理と投資を両輪に資産形成を目指す提案が好評。家族マネー会議も評判。現場にこだわるファイナンシャルプランナーで相談件数は2万6000件超。シリーズ累計95万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』など著作181冊、メディア出演多数。