特に、仕事において「優秀」という評価を得る人は、多くの場合、他のメンバーよりも「エゴ」が強く、「人から褒められたい」「周りから評価されたい」という意識が強い傾向があります。
だからこそ、「優秀」と評価される仕事を残しているのであり、それ自身は、良い面でもあるのですが、そうした優秀な人は、ときに、過度の嫉妬心や競争心、功名心や自尊心という形で、心の中の「エゴ」に、無意識に振り回されてしまうことがあります。

例えば、こんな場面です。

「エゴ」は向上心を生むが、しばしば成長の障害になる

ある会議で、斉藤さんは、前田さんの提案するプロジェクト計画に、異議を唱えています。彼の言葉をそのまま受け止めると、前田さんのプロジェクト計画の問題点を理路整然と指摘しているのですが、周りのメンバーは、斉藤さんが、同期の前田さんへのライバル意識で批判していることを感じ取っています。むしろ、それに気がついていないのは、斉藤さん自身かもしれません。

また、こんな場面もあります。

営業課の岡田さんが、後藤課長と二人での昼食時、後輩の福田さんの営業スタイルについて、色々と批判をしています。「福田さんのために、お伝えしておきますが」と言って語る岡田さんの言葉に耳を傾けながら、後藤課長は、岡田さんの本当の気持ちに気がついています。
後輩ながら、抜群の営業センスを持っている福田さんのことを、岡田さんは、「そのうち、自分を追い越すのではないか」と、内心、恐れているのです。
後藤課長は、そのことを敏感に感じ取っていますが、岡田さん自身は、その自分の心の動きに、気がついていないようです。

このように、我々の心の中にある「エゴ」は、我々の意欲や向上心を高めるときもありますが、しばしば、他人との摩擦や葛藤を生み出し、人間関係に悪い影響を与えてしまうことがあります。
そして、その結果、職場の仲間と良い関係を築き、互いに円滑に協力し合いながら、仕事に取り組むことの障害になってしまうことさえあります。

その意味で、斉藤さんも、岡田さんも、優秀な人なのですが、どこかで壁に突き当たってしまうでしょう。

すなわち、優秀な人が突き当たる壁は、この斉藤さんや岡田さんの姿に象徴されています。
それは、

自分の「エゴ」が見えていない

という「エゴの壁」です。

では、どうすれば良いのでしょうか。

ときに、職場の人間関係やチームワークに悪い影響を与えてしまう、こうした心の中の「エゴ」に、どう処すれば良いのでしょうか。