また、こうした光景も、目にしたことがあるのではないでしょうか。

一つのプロジェクトが終了した後の総括会議です。
プロジェクトが成功裡に終わったことから、山下課長は、上機嫌です。
プロジェクト・メンバー全員を前に、山下課長は、プロジェクト・リーダーの中島さんを見ながら、こう褒めました。
「しかし、このプロジェクト、当初は、この短い期間で目標を達成できるかどうか心配したが、よく予定通りに進めることができたな。よくやってくれた」
この褒め言葉を聞いて、中島リーダー、嬉しそうに頷いています。

しかし、その横にいる、サブ・リーダーの石井さん、あまり嬉しそうな顔をしていません。
このプロジェクトが短期間で目標を達成できたのは、リーダーの中島さんの頑張りもあったのですが、それ以上に、サブ・リーダーの石井さんが、深夜までメンバーを励ましながら、一緒に頑張ったからです。

石井さんが嬉しそうな顔をしなかったのは、その自分の努力を、山下課長は分かっていないのではないかと思ったからであり、どこか、手柄を中島リーダーに持っていかれたような気持ちになったからです。
石井さん、次のプロジェクトも中島リーダーと一緒にやる心境にはなれないようです。

なぜ、優れた結果を出す人ほど、「嫉妬心」に振り回されるのか

この場面、阿部さんにも、中島さんにも、悪意はありません。また、彼らに何かの責任があるわけでもありません。
しかし、この橋本さんと石井さんが味わっている心境は、一つの人間集団の中で仕事に取り組んだ経験のある人ならば、誰もが、多かれ少なかれ味わったことのある心境ではないでしょうか。

なぜなら、我々は、人間であるかぎり、誰の心の中にも、「人から褒められたい」「周りから評価されたい」「世の中で認められたい」といった「エゴ」があるからです。

もとより、それは、決して否定されるべきことではありません。
それが、仕事への意欲や向上心につながるときも、多々あるからです。

しかし、この「エゴ」は、この橋本さんや石井さんの心境のように、ときおり、こうした嫉妬心や功名心のような形で、職場の人間関係を損ね、組織のチームワークを阻害するような動きをすることがあります。