コメよりもミカンが大事な静岡県

 浜松市は市町村としては国内トップクラス、なおかつ一部の都府県すら上回る農業産出額を誇る。農業産出額について、農水省は都道府県の額とは別に市町村の推計値も公表している。それによると、21年に浜松市は507億円で全国7位。都道府県で下から5位(43位)である石川県の480億円を上回る。

 同市の農業産出額の内訳は金額の高い順に果実161億円、野菜127億円、花卉65億円となり、この三つで全体の70%を稼ぎ出す。

 対する御殿場市は桁違いの23億円で、浜松市の約22分の1に過ぎない。金額の高い順にコメ8億円、鶏卵6億円、野菜3億円であり、コメが稼ぎ出す割合は実はおよそ3分の1に過ぎない。その割に耕地面積に占めるコメの割合は7割と高くなる。

 静岡県全体はというと、同年の農業産出額は2084億円で、全国での順位は15位。162億円のコメは、230億円のミカンを大きく下回る。静岡県を代表するブランドミカンがまさに、浜松市三ヶ日地区周辺で栽培される「三ヶ日みかん」。川勝知事が「コシヒカリ」に対抗する浜松の農産物として「三ヶ日みかん」を筆頭に挙げたのは、ゆえなきことではない。

 同県の農業産出額の推移を品目別にみると、大きく減額しているのは茶とコメ。1980年と2021年で比べると、茶は746億円から268億円と7割強も減らし、コメは318億円から162億円へ半減している。一方で果実は243億円から282億円と16%の増、花卉は125億円から168億円と34%増やした。

 ミカンより産出額が少ないコメのふがいなさは、こうして数字を見ると、争いようのないことなのだ。コシヒカリ発言は知事の首を飛ばしかねない事態まで招いたものの、十分な所得の確保、つまり儲かる農業を標榜している静岡県のトップがコメを批判するのは、当然と言えば当然である。