<求人票と実際の労働条件が違った場合の扱い>
(1)職業安定法の改正(平成30年1月1日施行)により、求人票に記載された労働条件を変更する場合には、その旨を労働者に明示する義務が生じる。明示の手段としては、面接試験の際に説明する、労働条件通知書や雇用契約書を提示する時点で説明する、条件の変更があった時点で文書通知するなどの方法がある。
(2)(1)に加えて応募者からの求めがあれば、労働条件が変更された理由を説明する必要がある。

「甲社の場合は、Aさんの住所が都内にあるので転勤を伴うことは予想できます。そのため、面接試験を受けた時点で試用期間中は大阪勤務になることを説明した方がよかったですね。ところで、他の新入社員はどうですか?」
「Aさんと同じ方法です。労働条件通知書兼雇用契約書を渡すときに説明し、15人全員に了承してもらいました」

 B部長はため息をついた。

「Aさんには入社の可否を確認するために、明日、私から連絡することになっています。そこで再度、入社してもらうよう説得するつもりです」

<求人票に記載する労働条件等のトラブル回避法の一例>
〇 できる限り、求人票の内容と実際の労働条件に差異がないように努める
〇 求人票の掲載後、労働条件等に変更があった場合はすみやかに訂正等を行う
〇 給与、賞与、勤務日数・休日数などは「昨年度実績」等と見込み額であることを記載する
〇 求人票の内容と実際の労働条件に違いがあるときは、面接時に説明して納得してもらう

実際の労働条件が契約内容と違う場合はどうなる?

「こんなこと考えたくはないですが、もし仮にAさんが大阪勤務に納得せず入社をしなかった場合は、どのような扱いになりますか?」
「甲社とAさんとの間には、まだ正式な雇用契約が結ばれていないので、Aさんが入社しなかった場合は内定辞退の扱いになります」
「では、Aさんが入社した後で雇用契約した内容と実際の労働条件が違うときはどうなりますか?」

<実際の労働条件が契約内容と違っていた場合>
〇 雇用契約を結ぶときに変更点を含めた労働条件を説明し、Aが合意すれば変更された条件で働くことになる。
〇 実際の労働条件等が労働条件通知書、雇用契約書などと違っていた場合、労働基準法違反になる。労働者は労働契約を即座に解除して退職することが可能。この場合は会社都合退職として取り扱う。

 B部長の説明に納得いかなかったAは、労働条件通知書兼雇用契約書に署名せず、そのまま会社を飛び出した。自宅に戻っても怒りがおさまらず、C子にLINEを送った。