お金は人生をゆたかにしてくれる道具ですが、遣い方を間違うと、自分や人を傷つける“刃物”になってしまうのです。たとえば、資産がありすぎて相続でもめるのはよくある話。昨今は“後妻業”や特殊詐欺、泥棒に狙われた話もたびたび聞きます。

 宝くじに当たって不幸になる原因で、もっとも多いのがお金の感覚が麻痺して、散財してしまうこととか。ギャンブルや株で得たお金もそうですが、苦労して手に入れていないので、なくなるのも早い。また、お金が目的の人たちとつるんだり、仕事を辞めてしまったりしては、ほんとうの友人や才能を得る機会を失ってしまうでしょう。

 幸せなお金持ちは、お金の効力も怖さもわかっているので、つねに謙虚な姿勢です。

「お金=自分の価値」だとは思っていないため、働くことや学ぶことをやめません。子どもに対して、自力でなにかをつかむ機会を与えるのも、賢明なお金持ちです。

書影『お金の不安がなくなる小さな習慣』(毎日新聞出版)『お金の不安がなくなる小さな習慣』(毎日新聞出版)
有川真由美 著

 一方、「お金がなくて陥る不幸」も深刻です。こちらのほうが陥る確率は高い。失業、倒産、病気などで、お金がないばかりに、たいへんな苦難にあった人もいるはずです。いちばんは食べ物に窮すること。イライラして些細なお金の遣い方でもめたり、家族が困っているときに援助できなかったりするのも悲しいものがあります。

 ただ、「貧しかったからこそ、家族が団結して乗り越えた」という人たちもいます。私も上京した直後は3つのアルバイトを掛け持ちし、節約生活を楽しみつつも「ぜったいにこの場所から抜け出してやる!」とハングリー精神がバネになっていました。

 貧困を貧困と思わずに満足している幸せな人もいます。お金という道具を正しく遣うためには、お金の性質だけでなく、人間の性質も知る必要があるのです。