新卒採用で入社し、定年まで一つの企業で仕事をするという人生のモデルは、過去のものになりつつあります。複数のキャリアを経験する社会人も珍しくなくなりました。こうした時代において個人の「学び」は重要な役割を果たします。しかし、「学び」の大切さはわかっていても、「何をどう学べばいいかわからない」「始めてみたが続かない」という人も少なくありません。そんな悩める人の数々の疑問に答えてくれるのが、ベネッセコーポレーションで社会人向け教育や人材開発事業を統括し、世界6900万人以上が学ぶオンライン動画学習プラットフォームUdemyの日本事業責任者である飯田智紀氏です。本連載(全3回)では、「社会人の学び事情」に詳しい飯田氏の新刊、『何から始めればいいかがわかる 最高の学び方』より一部を抜粋してお届けします。
自分自身の解像度を上げるために
「とりあえず決めて、動く」
新年度から何かを学びたいと考えている方へ。
突然ですが、次のチェックリストを見て、「そうだ」あるいは「そうだと思う」ものにチェックを入れてください。
□正直、社会人になってからちゃんと学んでいない
□何を学ぶかがわからないから、動けない
□楽しくないと続かない
□やるからには、ちゃんと成果を出すべきだ
□学びは自分を変える・リセットするためのものだ
いかがでしょうか。
ほぼ全員の方が、一つ以上チェックがつくはずです。五つの項目全部にチェックがついたという人もいるでしょう。
実はこれ、社会人の「学びに関するよくある誤解」をリストにしたものです。
学びの必要性を感じていても学ぶことをためらっている人、学びに関してなんらかの悩みを持っている人は、リストのどれかにチェックを入れている可能性が高く、まずは五つのリストにある「誤解」を解くことから始める必要があります。
一つずつ見ていきましょう。
誤解1:正直、社会人になってからちゃんと学んでいない
この項目にチェックした人は、本当は学んでいる人です。
学んでいるという自覚や実感がないため、「学んでいない」にチェックをしてしまっている可能性が大なのです。
上司や会社から押しつけられた「やりたくないこと」、金銭的に余裕がなく無料の教材を活用しておこなう独学、忙しくて時間がないから朝1分しかできない練習、興味を持って調べてみただけの行為など、実はすべてが立派な学びです。
「思っているよりも自分は学んでいる」という事実に目を向けましょう。
誤解2:何を学ぶかがわからないから、動けない
学びについて一番多く耳にする悩みは、「何を学んでいいかわからない」です。
特に、30代以降の比較的仕事に余裕が出てきた人たちが口にする言葉です。これからの仕事や人生を考えたときに、多種多様な選択肢があることを知り、迷い、どうしていいかわからなくなる。かつての私もそうでした。
実はこれも大きな誤解の一つです。選択肢=可能性なのですから。たくさんの可能性が目の前にあるからこそ、「とりあえず決めて、動く」のが大事です。動くことでしか「学ぶべきこと」の解像度は上がりません。
今の自分に関係がありそうなこと、なんとなくおもしろそうなこと、流行っていること、将来の役に立ちそうなこと、理由やきっかけはなんでもかまいません。気になったらやってみて「あれ?違うな」と思ったら、やめて次に行けばいいのです。