価格を上げられない日本

 もちろん、サイゼリヤも例外ではない。サイゼリヤが海外事業で利益を上げることができているのは、価格が高めに設定されているからだ。一方で、価格が硬直化してしまっている日本では、当然ながら利益が上がらない。

 ここから学ぶべきもう1つの点は、「価格を上げられなければ、経済としてジリ貧だ」ということだ。

 日本国内では、物価高を素直に価格転嫁しにくい風土がある。

 サイゼリヤはまだいい。海外で、稼げているのだから。だが、海外事業を持たず、国内事業だけで成立させなければならない他の外食チェーンはそうはいかない。

 価格転嫁できないならば、乾いたぞうきんを絞るようなコストダウンや、労働環境へのしわ寄せを甘受せねばならなくなる。1品当たりのわずかな売り上げを、会社と、働き手と、取引先で分け合い、その少ない取り分の中で経営をせざるを得なくなる。

 お値段据え置きは、確かにうれしい。私もサイゼリヤは大好きで、訪れたときは前菜・メイン・パスタ・デザート・ドリンクの「サイゼリヤフルコース」でいつも楽しませてもらう。

 それでも総額2000円もいかないのはうれしくもあるが、本来それでは経営も経済も回らないのだとすれば、そろそろ日本社会全体として、利益の大切さと、価格転嫁の必要性を理解しなければならないのではないか。