しかもこの過程で多くのシングル女性は親やきょうだいとの密接な交流を続けて親密圏を築き、親族関係の点で孤立していません。また、友人・知人との関係も男性に比べて豊かなのです。このようにして、ひとりで暮らすことを支える人間関係を築いていることが、女性のひとり暮らし意向を高めていると思われます。

シングル女性が感じる
東京の魅力とリスク

 女性たちにとって、東京という自由な環境は魅力的です。地方圏の女性たちが東京に出てきた最大の理由は、自由へのあこがれです。40代後半の女性は次のように語っています。

「東京はひとり暮らしをするにはいいなと思います。実家に隣組というものがあり、葬式などのときに地域の人がご飯を作るなど、手伝ってくれます。そういったつきあいは、家族がいないとできません。実家で独身のままだと他の人から嫌な目でみられるのですが、都会ではそういった煩わしさがないのです」(48歳女性)

 また、東京はミドル期の女性がフルタイムで働き自活できるメリットがあります。ただしそれは、結婚しないことと引き換えになっているともいえるのです。しかし、女性の中には年齢とともに収入が減少して生計の不安を抱えた状態に置かれている例もあります。

「東京で、一番長くいた職場は6年くらいです。今、ルームシェアをしていますが、解消してひとり暮らしをしたいので、もうちょっと月収のいいところに移りたいという希望があって、長くいた職場を辞めました。その後、入る会社、入る会社が最低賃金法違反などでやめざるをえない感じでした。今の会社は広告代理店が名目の会社ですが、実態は社長ひとりと自分だけの会社です。いろいろひどい会社を経験してきましたが、今の会社が一番ひどいと感じます。(中略)デザインの技術を持っていても、この年齢だと面接に行くこともできず悩んでいます。

 50代になったら、ますますフルタイムで働ける仕事がなくなるのに、身動きがとれない状態で、貯金もできず、前年度の保険料も払えていません」(48歳女性)

ひとり暮らしを続けるか「わからない」
女性より男性がそう考える理由

 一方、男性は50代まで「わからない」が多く、ひとり暮らしを受け入れるような気配はみえません。「わからない」は所得が高いほど多く、「続けたくない」も女性のように減少しません。