市長 これは、私たちにとって重要なシンボルとなっています。市庁舎が建設された80年ほど前のことですが、ここで働く政治家と一般市民が一緒に肩を並べている様子を示すという意図で造られました。スウェーデンの、強固な理念の表れです。つまり、政治家も一般市民も平等であるということで、政治家と市民で生活の状況が著しく異なってはならないということです。

筆者 仕事帰りに食料品の買い物をして、バス停の列に並んでいるあなたを見かけた人がいますが?

市長 もちろん、私です。

筆者 運転手付きの公用車はないのですか?

市長 公的イベントや警備上のリスクがある場合には車を使うことができます。しかし、通勤はバスを使うか、時には徒歩で来ることもあります。ストックホルムの市民と同じです。

筆者 市長として公邸に住むこともありませんね。通勤や食事の手当といったものはないのですか?

市長 給与があるだけです。1週間に1度、副市長と私はランチミーティングを行っています。この建物の中にあるレストランから注文していますが、市がこのランチにかかった経費を還付してくれます。

 私たちはこのランチの経費を国税庁に報告し、この経費に関しては税金を払わなければなりません。もちろん、外国からの賓客を迎えるときなどは特別な手当が支給されます。

筆者 あなたは市民の平均以上の給与をもらっていますが、市長を引退するときは終身恩給をもらうことができますか?

市長 はい。

筆者 それは特権ですか?

市長 はい。でも、現在議論されている特権ですので、規則が変わることになるでしょう。私も、この規則は変えるべきだと思っています。現在の決まりでは、市長が引退するとき、50歳未満であれば恩給は最大2年間支払われます。そして、50歳以上の場合は終身恩給がもらえるのです。私たちは、50歳という年齢は引退するには「若すぎる」と思っています。

「政治家は無給で働くべき」
フルタイムでなくても政治は回る

筆者 地方議員はなぜ無給で働くべきなのでしょうか?

市長 地方レベルでは、フルタイムの政治家が多すぎないようにすることが重要です。地方議員というのは、一般市民としっかりつながっていますし、一般市民によって政治が行われるべきだと強く信じているからです。これが、私たちの地方民主主義です。地方議員は本業をもっており、1週間のうち数時間を政治活動に充てるべきだと思います。