今年3月、ロシア大統領選に再選したプーチン大統領だが、ある地域では投票率104%というあり得ない数字を叩き出したという。選挙結果の偽造も囁かれているプーチン大統領を、ロシア流のジョークで笑い飛ばす。本稿は、早坂隆『世界のロシア人ジョーク集』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
いつ暗殺されるかわからない……
プーチン大統領の憂鬱
●ジョーク「叫び」
モスクワの街角で、一人の男が叫んだ。
「大統領の大馬鹿野郎!」
すると、すぐさま警察官が駆けつけてきて、男は逮捕されてしまった。男が言った。
「俺が何をしたって言うんだ!」
「プーチン大統領への侮辱は許されない!」
男は笑って言った。
「おいおい、俺はゼレンスキーのことを言ったんだぜ?なぜそんな勘違いを?」
終わりの見えないロシア・ウクライナ戦争。プーチンとしては、
(こんなはずではなかった)
というのが正直なところか。
神出鬼没の世界的アーティストであるバンクシーは2022年11月、ウクライナを訪れて瓦礫の壁に作品を描いている。小さな子どもが柔道着を着た大人を投げ飛ばしている絵などである。子どもはウクライナ、大人は柔道家であるプーチンを表していると思われる。
2023年3月には、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)が、プーチンに逮捕状を出した。「ロシアが占領地の子どもを自国に連れ去った行為は、戦争犯罪にあたる疑いがある」というのがその理由である。ただし、ロシアはICCに加盟していないため、プーチンの身柄が拘束される可能性は低い。この逮捕状発付の判断に携わった裁判官3名の内の1人は、日本人の赤根智子さんである。
同年5月3日の未明には、クレムリンへのドローン攻撃が試みられた。ドローンは上空で爆発したが、その様子を映した動画は世界中に拡散された。クレムリンはそもそも「城塞」という意味。そんなクレムリンが攻撃を受けたのは、第二次世界大戦以降、初めてのことであった。
さらには「プーチン暗殺計画」もあるとかないとか。元KGBのプーチンは、暗殺者たちの巧妙さと残虐さを知っているだけに、戦々恐々としているのではないか。
かつてのプーチンは、国民からの要望や質問に直接答えるテレビ番組「国民対話」で、カンペを見ることもなく、経済や安全保障といった幅広い話題に柔軟に答えるほどの高度なコミュニケーション能力を見せていた。しかし最近では、表情や言葉に以前ほどの覇気がなくなったように映る。まるで別人のように。
一方のゼレンスキーは、コメディアン時代とは大きく異なり、すっかり指導者の顔になってきたように見える。やはり、また別人のように。