ロシア人といえば大酒呑みというイメージを抱く人は多いだろう。キエフ・ルーシ時代に国教がギリシア正教になったのも、禁酒を説くイスラム教を避ける為と言われているほど筋金入りの酒好きだ。彼らの“命の水”であるウォッカにまつわるジョークを通じて、ロシア人の人間くさい一面に迫る。本稿は、早坂隆『世界のロシア人ジョーク集』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
ウォッカにまつわる
ロシア人ジョーク
●ジョーク「ニューヨークにて」
モスクワ市長がニューヨークを訪れた。
ニューヨーク市長が聞いた。
「ニューヨークはどうですかな?」
「街の治安は以前よりも少しは良くなったようですな。しかし、酔っ払いが多すぎる」
「まさか!モスクワほどじゃないでしょう」
「そんなことはない!じゃあ、今度、モスクワに来てみたらいいだろう!」
「もしモスクワのほうが酔っ払いが多かったらどうしますか?」
「そんな酔っ払いなど射殺してもらって構わない」
「随分と大きく出ましたね」
「なんてことはない。で、あなたは同等の権利を私にくれるのでしょうね」
「もちろんです。あなたもニューヨークで酔っ払いを見つけたら、好きなようにしたらいいでしょう」
その夜、ディナーを終えたモスクワ市長がレストランを出ると、タチの悪そうな酔っ払いの集団が下品に騒いでいるのを見つけた。モスクワ市長はうんざりした顔を浮かべ、彼らを射殺した。
翌朝の新聞。見出しは以下の通りだった。
「ニューヨークでロシア人ツアー客が虐殺される」
●ジョーク「機内放送」
モスクワに向かうロシアの国内線。機内放送による機長のお決まりの挨拶が滞りなく終わったが、スイッチを切るのをうっかり忘れてしまったため、以下のような独り言が機内に流れてしまった。
「さて、つまらん挨拶も終わったことだし、自動操縦に切り替えて、しばらく自分の時間を楽しむとするか。まずはウォッカを何杯か流し込んだ後、尻軽の女性クルーでも呼んで楽しむとしよう」
驚いた女性クルーの1人が、機内放送が繋がっていることを伝えるため、顔を真っ赤にして機長室へと急いで向かった。
その姿を見た1人の老婆が声をかけた。
「あら、そんなに急ぐ必要はないわ。まだウォッカを楽しんでいるだろうから」
●ジョーク「やめどき」
モスクワのバーで男が友人に言った。
「最近、困ったものでね。ウォッカを飲むと、翌日の仕事の妨げになるんだよ」
「それはいけないね。もうそろそろやめたほうが良いのかもしれないね」
2人は共にため息をつき、そして声を合わせて言った。
「仕事を」