だから、ひとりで遊び、ひとりで喜んだり、悲しんだりするほうがいいのです。

自由をとことん満喫する
ひとり旅打ちの麻薬的魅力

 旅打ちの話題からそれてしまいましたが、私はそれ以降、ひとりで全国の公営ギャンブル場を回るようになりました。

 ひとりとなると、スケジュールも自由ですし、宿泊する場所も自分が納得できれば粗末なところでかまわないので気楽です。私は根がケチなので、交通費・宿泊費はなるべく安くすませ、賭け金と夜の飲み代を多めに確保するという方針でやってきました。

 ひとり旅に慣れてしまうと、その自由さが麻薬的に楽しくなります。好きなだけギャンブルをして、好きな時間にやめて、夜の街で好きなだけ飲む。

 誰からも束縛されず、知り合いもいない初めての街で、それでも夜の盛り場にいれば、地元の人とひとり、ふたり、仲良くなる人間が増えてゆき、夜の酒場も楽しくなります。

 ギャンブルをしない地元の常連さんでも、東京から旅打ちに来た変な男ということで、珍獣を扱うようにもてなしてくれることがあります。そうした出会いが、私を新たな旅打ちに駆り立てるのです。

兼六園のベンチで仮眠して
競技場が開くのを待つ40男

 失敗もあります。2002年、金沢競馬場をめざした時には交通費節約のため深夜バスを使いました。その頃には、旅打ちではできるだけ投票券購入資金を多くしようと、交通費をケチるようになっていたのです。

 深夜バスは翌朝、無事に金沢駅に着きました。しかし高速バスの中でも値段の安い4列シートだったため座席が狭くて眠れず、しかも早朝5時に着いたものの、当時はまだ地方には終夜営業のマンガ喫茶もなく、競馬場が開く10時頃まで休憩場所も仮眠施設も探せませんでした。

 しかたなく兼六園まで歩いてそのベンチで仮眠し、警備員に怒られ追い出されました。今では笑える思い出ですが。当時私は40歳になろうかという年齢でした。いい年をして無茶をと思われるかもしれませんが、目的地がギャンブル場だとなぜか無茶したい気分になります。

 目的地が美術館や古刹などの名所だと、もう少し優雅に、きちんとした旅行計画にしよ うと考えるでしょう。それは目的が高尚だからだと思います。しかし公営ギャンブル場めぐりはあまり他人に自慢できない無謀な冒険なので、計画も無謀でいいかと思えるのです。

 私は現在は旅打ちにはLCCやホテル付きの格安出張ツアーを使うようになりました。さすがに狭いバスで眠れない移動には懲りました。それでもケチケチ旅行にこだわっていることに変わりはありません。