しかし、部下を成長させるには、成功体験を積ませることが欠かせません。そこで、できるリーダーは、部下に「自分の力でやり遂げた」という経験を味わわせるために、サポートに回るのです。時にはわざと曖昧な指示を出すことで、自ら考えるように誘導することもあります。

「自分がやったほうが早い」とリーダーが自ら動いてしまいたくなる気持ちをグッとこらえて、まずは個人の力ではなくチームの力が評価対象になると、考え方を根本から変える必要があります。

 ある会社のコンサルティングをした時のことです。その会社では、営業マネジャーの個人成績はいいけれども、離職する部下が多く、チームとしての成績は低迷していました。

 そこで私は、その営業マネジャーに伝えました。

「自分の成績が最下位になっても、メンバーに業績を上げてもらってチーム全体で予算を達成できればいいと、考えをシフトしてください」

 マネジャーも最初のうちは抵抗感があったようですが、自分が前面に出ずに部下のアシストに回ることで、見事にチームで予算を達成できるようになったのです。

 部下の能力・スキルを最大限に活かす。これがこれからのリーダーの役割と言えるでしょう。

あえて「自分でやらない」勇気を持つ

「共感型リーダーシップ」を実践するうえで大きな壁となるのが、「リーダー自身の承認欲求」です。

 私は研修や1on1ミーティングを通して、「共感型リーダーシップ」をうまく実践できているリーダーとできていないリーダーには、どんな違いがあるのかを分析してみました。

 その結果、見えてきたのは、実践できているリーダーは、「自分自身の承認欲求が満たされている」ということでした。

 自分からどんどん指示命令を出していく人は、責任感が強いことに加え、自分を誇示したい、認められたいという欲求が強い傾向にあります。

 リーダーになった方の多くは、プレイヤーとして実績を出してきた方です。すなわち、称賛されていた方です。なかには「ほめられて伸びるタイプ」と公言していた方もいるでしょう。それが、リーダーになったとたん、ほめられなくなったのです。