米国の「統合抑止」戦略は機能するか、試金石はウクライナ戦争収束と台湾有事回避イスラエルのテルアビブで行われたデモで、ハマス過激派による人質解放を求めるイスラエルの人たち。イスラエルへの弾薬輸送停止を決定したバイデン大統領への抗議も行われた Photo:Bloomberg/gettyimages

止まらぬウクライナ、ガザ戦争
「統合抑止」で平和は実現するか

 世界の分断や不安定化を象徴するウクライナ戦争やガザ戦争だが、止まる見通しはなく、泥沼化している。

 ウクライナ戦争では、米国の軍事支援再開が決まったが、その先手を打つようにロシアは7日、ウクライナ北東部ハルキウ近くで国境を超えて新たな軍事侵攻を始めた。ガザではイスラエル軍がガザ南部ラファへの進攻を進め、ようやく本格的に停戦に向けて動き始めていたイスラエルとハマスの交渉はまた中断してしまったようだ。

 ウクライナ戦争はロシアによるウクライナへの侵略戦争であり、ガザはイスラエルによる国際人道法を無視した攻撃だ。国際社会の規範に照らせば、戦争が停止されてしかるべきだし、国際連合が役割を果たすべきだ。しかし、国連安全保障理事会で強制力を持った形での決議は成立しない。ロシアの拒否権およびイスラエルを擁護する米国の拒否権が行使される限り、安保理は機能しない。

 世界の警察官の役割を担うことをやめた米国がこうした状況の下で打ち出している安全保障戦略が、同盟国と一体になって軍事面だけでなく経済制裁や外交圧力などを使って世界の安定を実現する「統合抑止」の考え方だ。

 戦略が功を奏するのか、当面の試金石はウクライナ問題と台湾有事の回避だ。