黒田日銀の「量的・質的金融緩和」は強烈なデビューだった。この日銀砲の威力はすさまじく、株価は安値から500円以上高くなり、為替も瞬時に2円50銭以上円安にふれて結局5円程度も円安になり、債券は長期金利が前日比0.125%低い(価格は高い)0.425%と過去最低を更新した。世の中の雰囲気を「オセロゲーム」のように一気に変えた。
マネタリーベース2倍は当然
黒田日銀の今回の決定について、筆者にとって二つの当然と二つのサプライズがあった。
まず、当然の一番目は、黒田日銀のとった政策だ。黒田日銀は、インフレ2%を2年間で達成するために、マネタリーベースを2倍にするという。
このマネタリーベース2倍に世間は驚いているが、日銀発表文では、マネタリーベースを138兆円→270兆円とするので、これを1年分でみれば70兆円程度の増加になる。
筆者は1月23日付け本コラムで、「60~80兆円のマネタリーベースの増加が必要になる」と書いているが、ほぼ同じ数字だ。岩田規久男日銀副総裁とは、デフレ問題について十数年来同じ意見をもっており、デフレ脱却のためにはどのような金融政策が必要かをこれまでも議論してきた。その一つが量的緩和によってマネタリーベースを増加させることで、そのためには年間どのくらい増やせばいいのかを具体的に議論してきた。
筆者の1月23日付け本コラムでは、過去のマネタリーベースとインフレ予想率との関係から算出しているが、名目成長率と金融緩和との関係を示す「マッカラム・ルール」からも一定の仮定をおけば算出でき、両者は似たり寄ったりの数字になる。数学の定理で別々の証明法を用いて示すように、専門家であれば、一つの結論を出すために、複数の事実や理論を使えるものだ。